ラクス代表取締役社長の中村崇則氏(撮影:榊水麗)

 生成AIやAIエージェントの台頭により「SaaS is Dead(SaaSの時代は終わった)」の声が上がっている。だが、この議論を意にも介さない企業がある。「楽楽精算」「楽楽明細」などバックオフィス向けSaaSを展開するラクスだ。同社は、25期連続増収を達成し、ARR(年間経常収益)は500億円に到達。SaaS不要論とは対照的に、高い成長率を維持し続けている。

 なぜラクスは成長を維持できるのか。AI時代においてSaaSはどう進化すべきなのか。日本のSaaS業界を牽引する同社の中村崇則社長が語る、SaaSの本質的価値とAI時代を見据えた未来図、そして生存戦略とは。

SaaSは終焉するのではなく、進化する

――ラクスは、創業以来25期連続で増収を達成し、クラウド事業でARR500億円(2025年12月月次報告)と驚異的な成長を続けています。この継続成長の要因をどう分析されていますか。

中村崇則氏(以下敬称略) 事業の取捨選択を徹底してきたことに尽きます。創業時のITエンジニア向けの教育事業からIT人材派遣へ、そしてSaaSへ。常に自分たちの強みを見極め、より得意とする領域に経営資源を集中させてきました。その結果が、今の成長につながっています。

――SaaS」という概念が定着する前から事業を展開されていますが、現在に至るまでに、サービスの本質は変化しましたか。

中村 本質は全く変わっていません。「ASP」が「SaaS」と呼ばれるようになっただけで、インターネットとコンピューターを活用して、お客様に便利なサービスを届けるという軸は一貫しています。今後は、そこにAIという新たな技術が加わる。ただそれだけのことです。

――生成AIやAIエージェントの台頭で「SaaS is Dead」という議論が起きています。SaaSの終焉説をどう見ていますか。

中村 「終焉」ではなく「進化」と捉えています。AIを取り入れることで、SaaSはより高度なサービスへと変貌を遂げるでしょう。ただし、データの整合性・一貫性の保証、セキュリティ、バックアップといった基盤機能の重要性は変わりません。

 かつてASPがSaaSと呼び名を変えたように、AI統合により新たな名称が生まれる可能性もあります。しかし、顧客価値を創造するという本質は不変です。

 正直なところ、「SaaS is Dead」という議論にはさほど関心がありません。私たちの使命は、最新技術を組み合わせて、顧客により大きな価値を提供し続けることです。

SaaSの本質的価値、勝ち残る条件とは?