SmartHR代表取締役CEOの芹澤雅人氏(撮影:榊水麗)

 労務管理クラウド市場での出荷金額で7年連続シェア1位(デロイトトーマツミック経済研究所調べ)を達成し、登録社数は7万社を超えるSmartHR。日本のHRテック市場を牽引する同社の芹澤雅人社長は“SaaS is Dead(SaaSの時代は終わったのか)”の議論について「私たちにとっては関係のない話です」と冷静に語る。その根拠は何か。そして、AI時代においてSaaSはいかにして新たな価値を生み出していくのか。芹澤社長に見通しを聞いた。

成長するSaaS、淘汰されるSaaS、明暗を分ける要因とは

――生成AIやAIエージェントの台頭により“SaaS is Dead”といった議論も耳にします。この議論をどのように捉えていますか。

芹澤雅人氏(以下敬称略) AIはテクノロジー進化の一環にすぎず、“SaaS is Dead”という議論もAIに限った話ではないと考えています。もともと市場には「伸びるSaaS」と「伸びにくいSaaS」が混在しており、AIの進化によってその境界線がより鮮明になったというのが私の印象です。

――その明暗を分ける境界線は、どこにあるのでしょうか。

芹澤 業務システムには“System of Record(記録のためのシステム)”という考え方があります。この概念に適合しているかどうかが、重要な分かれ目になるでしょう。

 業務システムとはつまるところ「人が業務の中で何かを記録するための仕組み」です。例えば世の中には、商談や顧客情報を記録・活用する「記録装置」としての役割を果たしているSaaSがあります。人は理由もなく記録を残すわけではありません。そこには「業務効率化」という明確な動機が必要です。業務効率が高まり、その結果として自然にデータが蓄積されていく——。これが業務システムの基本的な在り方です。

 一方、ここ10年のSaaSブームの中では、記録機能を持たずに外部データの参照に特化したサービスも多く登場しました。それらは一定の価値は提供してきたものの、AIの進化により「AIで代替できるのではないか」という見方が強まり、存在意義が問われています。

 SmartHRは創業当初から、自らをSoR(System of Record)と位置付け、実践し、多くのお客さまに受け入れられてきました。だからこそ、SaaS is Deadという議論は、私たちにとって関係のないことだと感じています。

AI時代にSaaSが担うべき役割

――SaaSとAIはどのような関係にあるとお考えですか。