帝国ホテル代表取締役 社長執行役員の風間淳氏(撮影:宮崎訓幸)

 多くの再開発計画が目白押しの東京都心部において、開発の延床面積が約110万平方メートルと最大級を誇るのが、内幸町エリアで10社共創となる「TOKYO CROSS PARKプロジェクト」だ。その一角を占める帝国ホテルは、本館とタワー館の建て替えを予定しているほか、直近の2026年3月には帝国ホテル京都の開業も控えている。高級外資系ホテルとの競争が激しさを増す中、長く日本の「迎賓館」たる役割を担ってきた帝国ホテルの一貫した経営理念や今後の事業戦略について風間淳社長に話を聞いた。

「TOKYO CROSS PARK構想」で変わる日比谷エリア

──帝国ホテルの敷地を含む東京・日比谷地区の再開発計画「TOKYO CROSS PARK構想(内幸町一丁目街区開発プロジェクト)」が進んでいます。原点は、2007年に三井不動産が国際興業から帝国ホテルの株式を取得し、筆頭株主になった頃までさかのぼりますね。

風間淳氏(以下敬称略) 当社のタワー館や本館の建て替えプランを一緒に考えていく協定を三井不動産さんと結び、その協定をもってわれわれの株式をお引き受けいただきました。その後、日比谷の再開発計画全体も、他社と共創する事業としてやっていくことになったわけです。

──以来、高級外資系ホテルが数多く都心部に進出し、ホテル間の競争も激化しています。

風間 帝国ホテル東京は従来スタンダードだった41平方メートルと31平方メートルの2タイプの客室が多く、全室50平方メートル以上あるような外資系ホテルと比べて、客室面積の競争力でやや見劣りしていました。ただ、スイートルームが45室と他のホテルより多いのが特徴です。

 スイート(Suite)はパーラーと寝室が一組になった「組み部屋」を意味します。帝国ホテル東京は歴史的に国賓やVIPの方々に数多くご宿泊いただいており、お付きの方の部屋を含めてご利用いただく機会が多いため、スイートの数が自然と多くなっています。

宿泊 プレミアデラックススイート ベッドルーム(写真提供:帝国ホテル)
宿泊 プレミアデラックススイート リビング(写真提供:帝国ホテル)

 ただし、VIP専用のスイートや入り口、導線がしっかり確保できている一方で、建物の構造的な問題によって、スタンダードルームを改装などで広くすることが出来ない状況です。そこは今後再開発のスキームによって、建物の容積率を上げることが可能になり、外資系ホテルに伍する客室面積を確保できるようになります。

帝国ホテル 東京ホテル外観(写真提供:帝国ホテル)

──昨今、建築資材や人件費高騰などの影響もあり、多くの企業で再開発計画の遅延が出ています。新しいタワー館が2030年度、本館が2036年度という当初の開業計画に変更はありませんか。