
住宅設備機器・建材メーカー最大手のLIXILは「インパクト戦略」を掲げ、中核事業を通じて環境や社会へのインパクト(良い影響)の創出に注力し、社会課題の解決とともに事業のさらなる成長につなげていくという姿勢を打ち出している。このインパクト戦略を旗印に現在LIXILをけん引しているのが、かつて住友商事を経て工具や資材のネット販売会社MonotaROを起業し、東証一部に上場させた経歴を持つ“プロ経営者”の瀬戸欣哉社長である。同氏は今後、LIXILをどのような企業に進化させようとしているのか。
世界の衛生環境改善に貢献する安価な簡易トイレ「SATO」
──瀬戸社長がリードして2021年3月期に「LIXIL Playbook」を導入しましたが、これはどのような内容ですか。
瀬戸欣哉氏(以下敬称略) 当社は歴史的に多様な企業との統合(トステムやINAXなど5社統合)をしてきた経緯があり、それだけ組織が複雑化していました。
私は2016年にLIXILの社長に就任しましたが、まず取り組んだのは、複雑な組織を一つにするパーパス(存在意義)の導入でした。「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパスを掲げ、この実現に向けた道筋を示す「LIXIL Playbook」を2021年に策定し、優先して取り組むべき課題を明確化しました。
組織をスリム化して生産性を上げ、長期的な成功が見込める分野を特定し、そこに注力する。さらに将来に向けたイノベーションを促し、競争力の強化を図る──こうした要素を包括的に盛り込んだのがLIXIL Playbookです。
その後、コロナ禍が落ち着いてきたのと前後して、インフレや気候変動による影響の拡大などさまざまな社会や経済の変動要因が出てきましたので、これまでの戦略の進捗を踏まえつつ、LIXIL Playbookで示した優先課題を更新しました。深刻化する環境課題への対応を強化するべく、新たに「環境戦略の事業戦略への統合」を優先課題として追加しました。
旗振り役のわれわれ経営陣も驚くほど現場の社員たちが環境関連商品の開発に情熱を注いでくれました。その結果、想定以上のスピード感で、脱炭素化に貢献できるような特徴ある商品を社会に送り出せていると思います。

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