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 モノづくりビジネスにおいて、世界的に主流になりつつある「オープンイノベーション」。ところが日本企業では依然、全てを自社で行う「自前主義」から脱却できずに商機を逃すケースが多く見られる。本連載では『学びあうオープンイノベーション 新しいビジネスを導く「テクノロジー・コラボ術」』(古庄宏臣・川崎真一著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集し、オープンイノベーションを円滑に進めるために心がけるべき他社との「コラボ術」について解説する。

 第5回では、オープンイノベーションで自社と提携相手がWin-Winになるために欠かせない「進化戦略」の捉え方について、3つの実例をもとに紐解いていく。

<連載ラインアップ>
第1回 なぜソニーは、世界最強の「CMOSイメージセンサー」を開発できたのか
第2回 オープンかクローズか、過剰な「秘密主義」がモノづくりにもたらした限界とは?
第3回 NTT×東レの機能素材「hitoe」、共同開発を実現させた“奇策”とは
第4回 セブン-イレブンの「5度目の正直」、コンビニ淹れたてコーヒーを成功に導いた学びとは
■第5回 新規市場開拓へ、フィリップス、ユニ・チャーム、LIXILが選んだ意外なパートナー企業とは?(本稿)
第6回 「ジャポニカ学習帳」のショウワノートと提携、廃業寸前の印刷所が生んだ奇跡の「おじいちゃんのノート」

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異なる戦略のコラボレーション

学びあうオープンイノベーション』(日経BP 日本経済新聞出版)

 オープンイノベーションは対等な関係でスタートし、お互いが学びあい、ゴールは両者がともに勝者になることだと述べてきました。「両者が勝者」になるためには、最初の契約段階から Win-Winとなれるビジネススキームを設計できていなくてはなりません。

 誰とでも Win-Winの関係を作れるわけではありません。Win-Winの関係になれる相手とは、どのような企業なのか。1つの答えは、進化戦略が異なる企業です。進化戦略の違う企業が同じゴールを目指す場合、ビジネスの棲み分けがしやすいからです。

 下図に示すのは、経営学の有名なフレームワーク「アンゾフの成長マトリクス」です。アンゾフの成長マトリクスは「成長戦略」を可視化するものですが、ここではあえて「進化戦略」と表現します。

 アンゾフの成長マトリクスは、横軸に製品軸、縦軸に市場軸を取ります。これを、「既存」か「新規」かで区分します。

 既存市場で既存製品を押さえていく戦略を「市場浸透戦略」と言います。逆に、既存市場に新規製品を投入していく戦略を「新製品開発戦略」と言います。新規市場に対しては、既存製品で新規市場を開拓する戦略を「市場開拓戦略」と言い、新規製品で新規市場を開拓する戦略を「多角化戦略」と言います。

 これは、会社がこれから目指す方向性と進化のあり方を示すマトリクスです。進化戦略が異なる企業同士の方がお互いに学びあい、Win-Win の関係を構築しやすいと言えます。

新規市場開拓と既存市場強化の組み合わせ

 オープンイノベーションの具体的なケースを、3つご紹介しましょう。

 1つ目は、2014年にオランダの電気機器メーカーであるフィリップス(コーニンクレッカ・フィリップス)が「ヌードルメーカー」という家庭用製麺機で日本市場に進出しようとした事例です。本格的なコシのある生麺が簡単にできると評価されている製品で、もともとはパスタ用として欧州で販売されていたものです。