写真提供:共同通信社

 モノづくりビジネスにおいて、世界的に主流になりつつある「オープンイノベーション」。ところが日本企業では依然、全てを自社で行う「自前主義」から脱却できずに商機を逃すケースが多く見られる。本連載では『学びあうオープンイノベーション 新しいビジネスを導く「テクノロジー・コラボ術」』(古庄宏臣・川崎真一著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集し、オープンイノベーションを円滑に進めるために心がけるべき他社との「コラボ術」について解説する。

 第6回では、小さな印刷所のSNS投稿がきっかけで大ヒット商品に化けた「おじいちゃんのノート」から、企業規模にかかわらずオープンイノベーションの機会をつかむために必要な姿勢について学ぶ。

<連載ラインアップ>
第1回 なぜソニーは、世界最強の「CMOSイメージセンサー」を開発できたのか
第2回 オープンかクローズか、過剰な「秘密主義」がモノづくりにもたらした限界とは?
第3回 NTT×東レの機能素材「hitoe」、共同開発を実現させた“奇策”とは
第4回 セブン-イレブンの「5度目の正直」、コンビニ淹れたてコーヒーを成功に導いた学びとは
第5回 新規市場開拓へ、フィリップス、ユニ・チャーム、LIXILが選んだ意外なパートナー企業とは?
■第6回 「ジャポニカ学習帳」のショウワノートと提携、廃業寸前の印刷所が生んだ奇跡の「おじいちゃんのノート」(本稿)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

自社のゴールを明確にする

学びあうオープンイノベーション』(日経BP 日本経済新聞出版)

 本書ではオープンイノベーションの実施を「新しいビジネスを生み出すため」としていますが、新しいビジネスを生み出すことも、ゴールではなく手段です。大事なのは、自社はどこに向かうのか、そのゴールを示す「進化戦略」にあります。ゴールを明確にしてこそ、実施すべき新しい事業が明らかになり、そのための手段としてのオープンイノベーションが可能になります。

 第2章でも述べましたが、適切な提携相手を見出すためには「戦略のすり合わせ」が必要です。戦略が明確でなければ、すり合わせはできません。オープンイノベーションがうまくいかない要因として、一般的には「ゴールを共有化できなかった」とよく言われますが、ゴールを共有できない理由に、「そもそもゴールが明確になっていなかった」ということはないでしょうか。

 ゴール設定は企業ごとにケース バイ ケースです。ただ、方向性としては言えることがあります。それは「強みを伸ばす」のか、それとも「弱みを克服する」のかということです。

 前者は、自社の持つ強みを伸ばして新たな収益の柱を創るということです。後者は、将来を踏まえると自社には弱みが顕在化する要素があるため、新事業の開発によってその弱みを克服するということです。強みを伸ばすことで弱みを克服する、という方向性もあるでしょう。どちらも、いかにハイリスクなビジネス環境下でも、経営を安定させることを目指す試みであろうと考えます。