写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 モノづくりビジネスにおいて、世界的に主流になりつつある「オープンイノベーション」。ところが日本企業では依然、全てを自社で行う「自前主義」から脱却できずに商機を逃すケースが多く見られる。本連載では『学びあうオープンイノベーション 新しいビジネスを導く「テクノロジー・コラボ術」』(古庄宏臣・川崎真一著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集し、オープンイノベーションを円滑に進めるために心がけるべき他社との「コラボ術」について解説する。

 第1回では、世界トップシェアのCMOSイメージセンサーを開発したソニーの例から、オープンイノベーションに必要となる3つの基本要素とは何かを探る。

<連載ラインアップ>
■第1回 なぜソニーは、世界最強の「CMOSイメージセンサー」を開発できたのか(本稿)
第2回 オープンかクローズか、過剰な「秘密主義」がモノづくりにもたらした限界とは?
第3回 NTT×東レの機能素材「hitoe」、共同開発を実現させた“奇策”とは
第4回 セブン-イレブンの「5度目の正直」、コンビニ淹れたてコーヒーを成功に導いた学びとは
第5回 新規市場開拓へ、フィリップス、ユニ・チャーム、LIXILが選んだ意外なパートナー企業とは?
第6回 「ジャポニカ学習帳」のショウワノートと提携、廃業寸前の印刷所が生んだ奇跡の「おじいちゃんのノート」

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学びあうオープンイノベーション』(日経BP 日本経済新聞出版)

 日本のイノベーションを象徴する企業の一つと言われながら、長く低迷期の続いたソニー(現ソニーグループ株式会社)が、ここにきて復活したと言われています。

 この復活を象徴するのが、世界市場トップシェアを誇るCMOSイメージセンサーです。そのシェアは2位以下を大きく引き離し、世界市場規模は200億ドル以上、今後も年平均5%を超える高い成長が見込まれています(2022年、Yole Intelligence発表情報より)。これほど巨大かつ成長の速い市場で圧倒的に強い製品技術を日本企業が有するケースは、久方ぶりなのではないでしょうか。

 ソニーのCMOSイメージセンサーが画期的だったのは、センサーの回路領域と画素領域を積層化してセンサーを極小化したことでした。これにより、多くのスマートフォンのカメラ機能で採用されました。

 注目すべきは、ソニーはこの積層化を実現するために、必要な回路領域と画素領域の「接合技術」を外部から導入していたことです(Ziptronix社の「特許ライセンス実績」発表より)。ただし、ソニーは「自前主義」を放棄して何もかも外部の技術に頼ったわけではなく、センサーを極小化するうえで必要な他の要素技術は、自前で開発していました。ソニーは、自前で開発した技術と外部から導入した技術をうまく組み合わせて、世界最強とも言えるCMOSイメージセンサーを開発したのです。

 日本のモノづくりビジネスにおいて「脱自前主義」が唱えられるようになったのは、2003年に米国の経営学者であるヘンリー・チェスブロウ氏が、「研究開発をすべて自社内で行う企業は、製品の市場投入までに時間がかかる。その一方で、自社と外部の知識を組み合わせて活用できる企業は、製品をより早く市場投入でき、結果を出していた」という研究結果を発表し、この考え方を「オープンイノベーション」として提唱したことが起点でした。ソニーの事例は、まさにチェスブロウ氏が唱えた通りの結果になったと言えます。