富士通取締役の阿部敦氏(撮影:宮崎訓幸)

 先行き不透明な時代に企業を正しく成長させるためのガバナンスが問われる中、取締役会の運営や社外取締役の役割も重要度を増している。現在、富士通と米オン・セミコンダクターの社外取締役を務める阿部敦氏が説く、これからの日本企業に必要な取締役会の在り方と、社外取締役の選び方とは。

よくあるパターンとは異なるオファーのプロセス

――2015年に富士通の社外取締役に就任されました。どのようないきさつだったのですか。

阿部 敦/富士通取締役(独立社外取締役)取締役会議長兼指名委員会委員長

1977年、三井物産入社。1984年、米スタンフォード大学ビジネススクール卒業(MBA)。同年、米国三井物産本店勤務。以降、半導体企業、投資銀行など、テクノロジー、メディア、通信業界に関するビジネスで要職を務める。2011年よりOn Semiconductor社本社、2015年より富士通の社外取締役。

阿部敦氏(以下・敬称略) ある日、私の事務所に富士通の関係者から電話があり、「指名委員会で社外取締役に指名されました。お引き受けいただけますか?」と言われました。正直、驚きました。

 驚いた理由は、日本の社外取締役の選任プロセスと違っていたからです。よくあるのは、秘書の方が連絡をしてきて、一度社長との会食に招かれます。会食の場では具体的なオファーはありません。会食を通じ、社長が「この人は無理なことを言う人じゃないな」と確認するのです。その後に正式なオファーがあるのが多くのパターンです。

 富士通の場合、そういった社外取締役を迎えるための儀式のようなものが一切ありませんでした。ただ、私は当時、富士通と競合する企業のアドバイザーをしていたので、いったんは断ろうと思っていました。しかし、むしろそういう人に社外取締役に入ってもらい、実践的な意見によって経営を変えていきたいという話をいただきました。

 そういうことなら、と思い、他社のアドバイザーを辞めて引き受けました。ちなみに、私と同時に社外取締役として富士通に入ったのが、宇宙飛行士の向井千秋さんです。そのことからも、外部からの意見を本気で求めていたことが分かりました。