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 世界的なインフレ加速が、企業のコスト上昇と収益悪化を直撃している。長年のデフレ環境に最適化され、インフレ対応の知見が乏しい日本企業は、いかにしてこの試練を乗り越えるべきか。

 シティグループ証券などで長年セルサイドアナリストを務め、一橋大学CFO教育研究センターで「投資家との対話」をテーマに講義する松島憲之氏が、持続的な企業価値を生み出すための戦略を解説。短期的な対策にとどまらず、企業を本質から変革し、長期的な成長へ導く「価値創造の秘訣」に迫る。

2025年の相場格言は辰巳天井

 一橋大学CFO教育研究センター(センター長:伊藤邦男一橋大学名誉教授)の財務リーダーシップ・プログラム(HFLP:Hitotsubashi Financial Leadership Program)Bコースが3月に10回目の修了式を迎えた。すでに全コースの修了生が1000名を超え、企業のCFOやCEOになられた方も多くいる。

 セルサイドアナリスト出身の私は、10年前から外部講師として「アナリストの視点と企業評価」という講義を行っている。また、「投資家との対話」というワークショップを受け持ち、受講生に自社のCFO役と投資家役をしてもらう実践形式のロールプレイングで投資家との対話を学んでもらっている。

 HFLPが目指すのは、目先の問題にとらわれず、持続的な企業価値の創造を実現するために、長期的な視点で企業戦略を構想し、企業を本質的に変革させることができる価値創造リーダーの育成だ。そのために価値創造に必要な知識・スキルの修得が不可欠になっている。

 私は長年にわたり証券会社でアナリストの仕事をしていたが、毎年年初に気に掛けるのが相場格言だった。2025年の相場格言は「辰巳天井」である。