三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長の田中昭二氏(撮影:今祥雄)

「生成AI活用の取り組みでは他社との連携が不可欠です。だからこそ、パートナー企業を含めたAIガバナンスを構築することが大切になると考えています」。AI活用に必要な環境整備についてこう語るのは、三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長の田中昭二氏だ。2024年2月に「AI戦略プロジェクト」を立ち上げ、全社的なAI活用に取り組む三菱電機。同プロジェクトを立ち上げた目的と生成AI活用のポイント、今後の展望などについて田中氏に話を聞いた。

グループ横断のAI組織、「戦略チーム」と「実働チーム」に分かれてAI活用を推進

――2024年2月に全社横断の「AI戦略プロジェクト」を立ち上げました。AI戦略プロジェクトとは、どのようなものでしょうか。

田中昭二/三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長

1991年に三菱電機 情報電子研究所(当時)に入社。1996年から2000年まで国際電気通信基礎研究所に出向。コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックスの研究に従事。三菱電機帰任後、携帯電話の画像処理技術、カーナビゲーションの描画処理技術の開発に従事。2013年から三田製作所にてカーマルチメディア製品の量産開発を牽引。その後、自動車機器事業部副事業部長、自動車機器開発センター長を経て、2024年2月にAI戦略プロジェクトグループマネージャー、現在に至る。

田中昭二氏(以下敬称略) 生成AIをはじめとした「AI利活用の戦略」をコーポレート全体で考えるプロジェクトです。具体的には、事業・ものづくり・社内業務の3つの領域にて、AIによる改革を進めていこうと考えています。例として、事業領域なら生成AIを活用した付加価値の提供、ものづくり領域なら開発や設計、製造のリードタイムの短縮、社内業務領域なら生成AI活用による業務効率化などが挙げられます。

 当社は元々、機械学習のAIを継続的に活用してきました。三菱電機のAI技術ブランド「Maisart(マイサート)」はその象徴です。こうした土台もあり、特に生成AIの登場以降は、この技術を活用するアイデアがグループ内の各所から出てきました。

 それらのアイデアを並べると、同じ課題に対してそれぞれの部門で個別に解決策を検討している事象が見受けられ、知識や情報のサイロ化が少なからず発生していました。そこで、当プロジェクトが旗振り役となって、社内のAI利活用に関する事柄を一度集約し、統率をとった上で取り組みを進めていくことになりました。すでに2桁に及ぶAI利活用の企画が動いています。 

 これ以外にも、グループ内で生まれたAI活用事例やベストプラクティスの共有、AIに使うデータの整備、人材育成の環境構築なども手掛ける予定です。加えて、AI利活用のガイドラインやガバナンスもトータルで見る役割も担っています。

――組織のメンバー構成はどのようになっているのでしょうか。

田中 グループ横断の横串組織になっており、AI戦略プロジェクトではAI活用の全社戦略を取りまとめています。会社全体で見ると、AI戦略プロジェクトの戦略チームと、各事業部門の実働チームに分かれており、戦略チームがアイデアの発案や計画を立てて、実働チームがそれを実装していきます。

 実働チームはプロジェクトごとに異なり、事業領域にAIのアイデアを実装する場合は、DXイノベーションセンターが担当するケースが考えられます。同様に、ものづくり領域は生産システム本部、社内業務領域はITソリューションビジネス&業務改革推進本部を中心に取り組みを進めています。