三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長の田中昭二氏(撮影:今祥雄)

「生成AI活用の取り組みでは他社との連携が不可欠です。だからこそ、パートナー企業を含めたAIガバナンスを構築することが大切になると考えています」。AI活用に必要な環境整備についてこう語るのは、三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長の田中昭二氏だ。2024年2月に「AI戦略プロジェクト」を立ち上げ、全社的なAI活用に取り組む三菱電機。同プロジェクトを立ち上げた目的と生成AI活用のポイント、今後の展望などについて田中氏に話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年5月22日)※内容は掲載当時のもの

グループ横断のAI組織、「戦略チーム」と「実働チーム」に分かれてAI活用を推進

――2024年2月に全社横断の「AI戦略プロジェクト」を立ち上げました。AI戦略プロジェクトとは、どのようなものでしょうか。

田中昭二/三菱電機 AI戦略プロジェクトグループマネージャー 兼 DXイノベーションセンター 副センター長

1991年に三菱電機 情報電子研究所(当時)に入社。1996年から2000年まで国際電気通信基礎研究所に出向。コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックスの研究に従事。三菱電機帰任後、携帯電話の画像処理技術、カーナビゲーションの描画処理技術の開発に従事。2013年から三田製作所にてカーマルチメディア製品の量産開発を牽引。その後、自動車機器事業部副事業部長、自動車機器開発センター長を経て、2024年2月にAI戦略プロジェクトグループマネージャー、現在に至る。

田中昭二氏(以下敬称略) 生成AIをはじめとした「AI利活用の戦略」をコーポレート全体で考えるプロジェクトです。具体的には、事業・ものづくり・社内業務の3つの領域にて、AIによる改革を進めていこうと考えています。例として、事業領域なら生成AIを活用した付加価値の提供、ものづくり領域なら開発や設計、製造のリードタイムの短縮、社内業務領域なら生成AI活用による業務効率化などが挙げられます。

 当社は元々、機械学習のAIを継続的に活用してきました。三菱電機のAI技術ブランド「Maisart(マイサート)」はその象徴です。こうした土台もあり、特に生成AIの登場以降は、この技術を活用するアイデアがグループ内の各所から出てきました。

 それらのアイデアを並べると、同じ課題に対してそれぞれの部門で個別に解決策を検討している事象が見受けられ、知識や情報のサイロ化が少なからず発生していました。