1924年、創業間もない三菱電機の汎用モータ量産工場として設立後、同社のものづくりの拠点として発展してきた名古屋製作所。稼働100年を迎えた現在は、ファクトリーオートメーション(FA)関連機器の生産の中心地であり、世界の生産拠点のマザー工場としての役割も担っている。田中貴久所長に、同工場の歴史と三菱電機のものづくり文化を尋ねた。
■【前編】三菱電機のものづくりを支える名古屋製作所 田中貴久所長が語る、グループ工場の「親」として果たす責任(今回)
■【後編】三菱電機の“FA中核工場”名古屋製作所長に聞く、デジタル工場でもなお「無人」にはならない理由
「モートル」と呼んでいたモーターが、技術のルーツ
――名古屋製作所は、三菱電機の中でも長い歴史のある工場ということですが、どんなものを作ってきたのですか。
田中貴久氏(以下・敬称略) 当社は1921年に当時の三菱造船(現・三菱重工)から分社して設立しました。名古屋製作所は、その3年後に、旧三菱造船が保有していた現在の土地に建てられた工場です。今年、設立100周年を迎えました。
工場設立当初の主力製品は、汎用モータです。当社では「モートル」と呼んでいましたが、工場で機械を動かすための三相モータを生産していました。この汎用モータの生産から派生して、工場内の生産設備を制御するシーケンサ、NC装置、サーボ、インバータなどの機器を開発、生産してきました。
一方で、モータを組み込んだ製品の開発と生産も手掛けていました。冷蔵庫や扇風機といった家庭用の電気製品も、当社として最初にこの名古屋製作所で開発、生産されており、後に各地の工場に移管されました。
いずれにしても、モータというコア技術から、日本経済が発展するのに合わせ、社会に必要なさまざまな応用製品を生み出してきたのが、名古屋製作所の歴史です。