写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 電気自動車(EV)のコア部品の一つとされる電動ユニット「eアクスル」。国内外で開発競争が激化する中、各社は何で差別化を図ろうとしているのか。また、この開発に参入する内燃機関の部品サプライヤーは、今後のEV普及を見据え、製品ポートフォリオの転換をどう図ろうとしているのか。日刊自動車新聞編集本部副本部長の畑野旬氏に聞いた。

<連載ラインアップ>
第1回 業界再編、SDV、自動運転・・・日刊自動車新聞副本部長に聞く自動車業界の注目動向
第2回 SDVで世界シェア3割は実現可能か? 日刊自動車新聞副本部長が解説する経産省・国交省「モビリティDX戦略案」の狙い
■第3回 2025年に第2世代を投入、アイシンがeアクスルで目指すEVとHVの二刀流とは? (本稿)


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群雄割拠する「eアクスル」サプライヤー

――電気自動車(EV)向けの動力源となる電動ユニット「eアクスル」が注目を集めていますが、そもそもeアクスルとはどういったものなのでしょうか。

【日刊自動車新聞】

1929年に日本初の自動車専門紙として創刊。専門紙としては、世界最大級の部数を誇る。東京本社と全国の支社、支局のネットワークを駆使して自動車産業の今を発信中。
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畑野旬氏(以下・敬称略) eアクスルとは、EVが走るために必要な駆動用モーターやインバーター、減速機などを一つにまとめてパッケージ化したもので、エンジン車のエンジンとトランスミッションに代わる電動ユニットです。

 国内では、2019年にはアイシンが45%、デンソーが45%、トヨタが10%出資する電動化システム、電動駆動モジュールの開発、販売会社であるBluE Nexus(ブルーイーネクサス)が設立されています。アイシンは、2004年に初めてハイブリッドトランスミッション発売してから500万台以上の電動ユニットを、デンソーは、1997年の初代プリウス発売以降2000万台以上のインバーターを開発、生産してきました。

 そうした両社の実績と知見を生かした電動駆動モジュールの開発が進められています。トヨタ自動車(トヨタ)が2022年に発売したEV「TOYOTA bZ」シリーズの第一弾となる「bZ4X」に、BluE Nexusのeアクスルが初採用されました。

――海外でもeアクスルを手掛ける競合はいるのでしょうか

畑野 すでに世界には多くの競合がいます。国内ではホンダ系の日立Astemo、日産系のマレリ、いすゞ自動車系のIJTTなどの他、独立系のニデックや明電舎、三菱電機、ユニバンスなどがあります。

 また海外では、ドイツのボッシュやシェフラー、カナダのマグナ インターナショナル、アメリカのデーナ、フランスのヴァレオなどがeアクスルを手掛けています。そしてBYDやテスラなどはeアクスルを内製しています。

 eアクスルは従来のエンジンとトランスミッションと比べ、技術的に難しいものではありません。新規の部品も少ないので電気関連やモーター関連など、国内外のさまざまなサプライヤーが参入してきています。

 中国には200社くらいのサプライヤーがあると言われており、すでに激しい価格競争が始まっています。そのため、日系メーカーでは、ニデックが中国では採算が取れず欧州に向けてかじを切っていますし、明電舎は中国での事業を見送るなど、事業計画の修正を余儀なくされています。果たして本当に勝者は生まれるのかという状況だと思います。