沖電気工業 代表取締役社長の森孝廣氏(撮影:酒井俊春)

 2023年3月期に最終赤字に陥った沖電気工業(以下・OKI)が、業績回復の道を着実に進んでいる。けん引するのは、2022年に社長に抜擢された森孝廣氏だ。2023年度からの中期経営計画では、「縮小均衡からの脱却」をテーマにした既存事業の変革と、次世代の成長に向けた投資も加速させる。攻めに転じる準備を整えつつある同社の今を聞いた。

特集・シリーズ
我が社の戦略

企業の成長に向けた指針となる中期経営計画。そこには、各社が直面する経営課題と、それを解決するために練り込まれた戦略が描き出されています。本シリーズでは、各社の経営トップや経営企画担当役員などへのインタビューにより、各社の描く戦略の“真の狙い”や中計に込めた“意志”を活写します。 

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新中計の序盤は順調だが気は抜けない

森 孝廣/OKI 代表取締役社長

1964年生まれ。1988年OKI入社。プリンター事業を中心に営業部門で実績を重ね、2006年株式会社沖データ国内営業本部パートナー統括営業部長に就任。2017年同社取締役、2020年同社社長、OKI執行役員に就任。2022年に執行役員から取締役を経ずに代表取締役社長 兼 最高執行責任者に就任。2023年最高経営責任者 に就任。

――2022年に社長に就任されてから最初となる、2023年度からの中期経営計画を実行して1年目が終了しました。業績はV字回復と言っていいと思いますが、どう評価していますか。

森孝廣氏(以下・敬称略) 今の段階で評価することはできませんが、確かに今中計の1年目はまずまずの結果でした。既存事業の収益力が回復し、営業利益率は4%を超えるところまで戻っています。しかし、4%でよくやったということにはなりませんので、ここからさらに上げていかなければいけません。

 現中計1年目の結果は、2つのことを示唆していると思います。1つは、ここ数年既存事業の利益は出にくい状況でしたが、やるべきことをやれば、利益を戻すことが可能、ということです。

 もう1つは、既存のやり方の延長線上では、利益水準は低いままだということです。市場の要求レベルは上がる一方で、高い収益性を望むことは難しくなっています。あらためて、収益性の高いビジネスをどのように作っていくかが、今後の成長の鍵を握ると理解しています。