
2024年5月には物流総合効率化法が改正され、物流業務委託者・物流事業者双方に規制的措置が導入される※注など、物流業界における業務の効率化は目下の課題だ。物流の現場では倉庫内作業の仕分けの自動化や、生産拠点から納品先へのトラック配車の自動化など、次々にデジタル化による効率化が進められているが、まだまだアナログな、人間の勘と経験頼みのブラックボックスが残されている。「フォークリフトによる荷役」だ。今、見落とされがちなこのフォークリフトの“電池”に注目した業務効率化が注目を集めている。
※注:国⼟交通省・経済産業省・農林⽔産省「『流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物⾃動⾞運送事業法の⼀部を改正する法律』の施⾏に向けた検討状況について」
物流DXの次の手に、フォークリフトの運用効率改善
ピッキングや仕分けといった倉庫内作業、さらには生産拠点から倉庫、倉庫から納品先へのトラック配車の自動化など、次々に物流の業務効率化が進められている。しかし、倉庫とトラックとの間にはまだまだアナログな、人間の勘と経験頼みのブラックボックスが残されており、前述の通りフォークリフトによる荷役には課題が残る。
「日頃から電動フォークリフトを多くご利用のお客さまのもとで、現状の把握とそれに基づく改善が進められています」と電動フォークリフト用電池状態監視サービス『withBMS(ウィズビーエムエス)』を提供するエナジーウィズにて、新事業統括部監視システム事業推進グループ担当部長を務める鳥海英郎氏は言う。
2021年に現在のエナジーウィズへ社名を改める前から100年以上にわたり蓄電池の製造と開発を手掛けてきた同社は、2023年9月から、電動フォークリフトのバッテリー状態を24時間監視し、トラブルを回避し運用効率の改善につなげるサービス『withBMS』を提供している。日頃からバッテリー状況を監視しておくことで、急なトラブル、無駄な配置、バッテリーの短命化を防ぐことができる。
例えば、建築資材大手の大建工業では、電動フォークリフト用の電池の利用状況を可視化によって稼働状況を把握し、運用を改善したうえ、予備電池を適正数に見直した。
ほかにも、伊藤忠食品や、食品メーカー系ロジスティクス企業など、地域ごとの製品ラインアップや季節変動が大きい食品業界でも、拠点別にとどまらず、フォークリフト配置とバッテリー手配の全体最適に寄与している。
「従来は、飲料の扱いが多いある拠点で、荷役の需要が高まる夏の間だけフォークリフトを追加でレンタルしていました。しかし、別の拠点の運用効率向上を受け、その拠点から移動させて使うことでレンタルが不要になりました」
こうした改善を可能にするwithBMSは、電動フォークリフトの鉛蓄電池にバッテリー・モニタリング・ユニット(BMU)を付設することで実現するシステムだ。BMUは、電圧や電流といった充放電の状況を把握できるデータや、バッテリーの温度や電解液(希硫酸)の液面の高さを24時間監視し、サーバーへ送る。これらのデータはエナジーウィズの専門家によって分析され、月に一度、顧客企業に報告される。すると、どの個体が多く稼働し、どの個体はそれほどでもないかなどが一目瞭然で、フォークリフトやオペレータの運用体制や再配置の判断材料になる。

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適正な運用と管理でバッテリーを使い切る
メリットは配置の見直しが可能になることだけではない。バッテリートラブルとそれによる業務への悪影響も回避できる。
「もしもバッテリーの温度や液面に異常があれば、月に一度のレポートを待つことなく、すぐにお客さまのもとへ連絡が入ります。そのため、オペレータを含む現場の安全性が向上し、事故や事故による業務停止を予防できます」
バッテリーの適正な運用と管理により、その性能を最大限に活かすことができる。結果的に短命化を防ぎ、余分なコスト削減にもつながるだろう。
「フォークリフトはリース利用している企業も多いのですが、リース期間が終わる前にバッテリーが寿命を迎えてしまい、追加コストや工数が必要になるケースもあります。適正な管理と運用ができていないと、想定より早くバッテリーが機能しなくなり、本来の寿命までしっかりと使い切れないのです。こうした事態を避けるには、例えばいわゆる“ちょこちょこ充電”は避けた方が良いのですが、これが習慣化しているオペレータもいます。状態の可視化は、こうした習慣改善のきっかけになります」

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状態は単に可視化がされるだけでなく、その数字の意味するところや、改善のためのアドバイスなども添えた形でレポートされる。
「私たちの鉛蓄電池に関する知見を活かしていただくことができます」と鳥海氏。
しかし必ずしも、すべての現場に改善の必要があるわけではないそうだ。
「現場の方々によってすでに最適な運用がされているケースもあり、頭が下がる思いです」
もともと『withBMS』は、バッテリーの遠隔監視というアイデアから生まれたサービスだ。バッテリーで駆動されるツールは様々にあるが、フォークリフトに着目したのは、物流の現場では倉庫や配車業務のデジタル化が進む一方で、フォークリフトの運用状況が属人化しているという課題があったからだ。属人化された現場は、一足飛びには仕組み化しにくい。
「フォークリフトの稼働状況改善をお考えのお客さま以上に、『できないだろう』と考え、改善の発想を持たれなかった方も多いのではないかと思います」
しかし、バッテリーに着目したことで属人性が可視化され、それが改善の第一歩となる。
24時間監視と分析が未来を変える
フォークリフトには、石油製品を燃料とするエンジン式と電池駆動のバッテリー式とがあり、バッテリー式はエンジン式に比べて排ガスを排出しないことから、日本のフォークリフト市場の約70%を占めている。
バッテリー式の場合、電池は主に鉛蓄電池とリチウムイオン電池とがあるが、実績豊富な鉛蓄電池は、使用済みの鉛のリサイクルの仕組みも確立されており、コスト面に優れている。一方、バッテリーの補水やバッテリー上面の清掃など定期的なメンテナンスは欠かせない。そしてそのメンテナンス状況は、従来は後にならないと把握できなかった。
「フォークリフトは年に一度の法定点検が義務付けられており、走行距離などのほか、バッテリーの状態も確認できます。しかし、そこでわかるのはどのように使われてきたかという過去の稼働履歴のみでした」
別の使い方があったのではないかとその場で感じても、後悔先にたたず。蓄電池はもっと適正に使ってもらえるのではないか。それが顧客の業務効率向上や成長に寄与することになるのではないか。そうした思いが24時間の監視サービスを生み、実態の把握と未来を予測し変えるための具体的なアクションにつながっている。
「現場ではより適正で安全な運用ができるようになり、『動くはずが動かない』といった事態を避けられます。また管理側も『よくわからないからとりあえず多めに配置しておこう』といった非効率に陥ることがなくなり、抜本的な見直しが可能になります」
これまでは置き去りにされがちだったフォークリフトの運用改善。『withBMS』はその挑戦を支援し、物流事業者の業務の高度化を後押しする。

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