
自動運転フォークリフトや燃料電池システムなど、次世代産業車両開発を精力的に進めている豊田自動織機。同社の技術トップを務めるのが、1980年代の大学生時代から自動運転に注目してきたという経営役員 技術統括の一条恒氏だ。一条氏は、時代の先を見通す自らの思考のルーツとして古今東西のSFを挙げる。豊田自動織機の企業精神にも表れているというSF的な発想とは? 日本が世界的自動車大国になるとは誰も考えなかった時代から自動車開発に挑み、トヨタ自動車を生んだ同社のDNAに迫る。
豊田自動織機は創業100周年のスタートアップ企業である
──一条さんは学生時代に農業機械の自動運転を研究していたのが豊田自動織機入社のきっかけとのことですが、1980年代という非常に早い時期からなぜ自動運転の分野に興味があったのですか。
一条恒氏(以下敬称略) 私は子供のころからロボットアニメに出てくる科学者に憧れていたんですよ(笑)。それもあって、大学時代は自動運転トラクターなど農業機械をロボット化する研究室に所属していました。1984年当時、自動運転というと、ロケットに搭載するような800万円もするジャイロセンサーを使用する必要があり、技術的なハードルは非常に高いものでした。
──当時はコンピューターもまだ一般的ではない時代ですね。
一条 ちょうど車載用マイコンが実用化され始めた時期でした。コンピューターを車両に搭載できるようになり、どのような制御が可能になるのか、さまざまな検証を重ねました。
研究の対象は農業機械だけでなく、建設機械やフォークリフトなど、作業機械全般に広がっていきました。これらの機械は本質的に、人間の手と足の機能を拡張するものです。そこに目と頭脳の機能を付加することで、新しい可能性が開けると考え、複数の機械を統括的に制御するシステムなど、自動運転の将来像を見据えた研究に取り組みました。