豊田自動織機 経営役員 技術統括の一条恒(撮影:榊水麗)

 自動車産業が100年に一度の大変革期を迎える中、産業車両の分野でも大きな技術革新が起きている。豊田自動織機は、フォークリフトやトーイングトラクターの自動運転化、燃料電池システムの開発など、次世代の産業車両開発を精力的に進めている。その最前線を指揮するのが、同社経営役員で技術統括を務める一条恒氏だ。フォークリフトの自動運転研究からキャリアをスタートさせ、30年以上にわたり自動運転技術の開発に携わってきた一条氏に、技術開発の現状と未来像を聞いた。

産業車両は自動運転で先行できる

──一条さんは豊田自動織機で、これまでどのようなプロジェクトを担当したのでしょうか?

一条 1987年に入社し、95年から先行開発担当として、2010年の産業車両の将来像を描く機会をいただきました。当時提案したのは、コネクテッドフォークリフトという概念です。全ての作業機にコンピュータが搭載され、それらがネットワークでつながる社会を想定しました。この構想が現在の自動運転フォークリフトの開発につながっています。

──自動運転フォークリフトは既に実証実験なども行われ、自動車の自動運転よりも先行しているイメージがあります。

自動運転フォークリフト カウンタータイプ

一条 はい。産業車両の自動運転は、実は自動車よりも先行した形で開発を進めることができました。それは、産業車両は工場内や倉庫内など構内物流という限られた領域で使用されるため、自動運転における環境をある程度をコントロールできるからです。例えば自動運転フォークリフトを優先的に通行させることもできます。一般道と比較して人などの予期せぬ飛び出しが起きる頻度が少ない環境と言えます。

 実は80年代から、AGV(無人搬送車)やAGF(無人搬送フォークリフト)として、床に埋め込んだ磁気線の上を自動で走行する技術は確立していました。これは決められたレールの上を走る、「誘導式」の自動運転です。

──現在の自動運転フォークリフトはもっと進化していますね?