兼松 代表取締役社長の宮部佳也氏(撮影:宮崎訓幸)

 2021年に兼松の社長に就任した宮部佳也氏は、「世界が変化する時、商社のビジネスはチャンス」だと話す。2024年4月に発表された同社の中期経営計画では、顧客企業が直面するサプライチェーンの再構築、デジタル化、環境対応などの解決を支援する、独自の事業計画を打ち出している。宮部氏に次の3年を勝ち抜く戦略の要諦を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年7月29日)※内容は掲載当時のもの

サプライチェーンの見直しで、商社の真価が問われている

――宮部さんが社長に就任されたのは、コロナ禍の真っ只中だった2021年です。それから3年が経ち、コロナも収束しましたが、事業環境に変化を感じていますか。

宮部佳也氏(以下・敬称略) この3~5年でいろいろなことが変わったという印象を持っています。まずコロナによってサプライチェーンが寸断されてしまい、電子部品などの供給が一時的に断たれました。それだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻によって穀物、畜肉の供給にも影響が出るなど予期せぬ事態が続きました。

 不安定で、今後がどうなるか分からないという状況下こそ、商社の真価が問われると思っています。現代のビジネスは、地政学的リスク、ブロック経済への対応などが課題ですが、商社の役割の基本は、買い手のお客さまに、世界からサプライソースを探してくることです。同時に、デジタル技術を生かした効率的で変化対応型のサプライチェーン構築も求められています。そうしたお客さまのニーズを探り、応えていかなければいけないと考えています。

 そうした状況を踏まえ、2024年4月から始まった新たな3カ年の中期経営計画は、事業環境の変化に対応する意味合いを込めて、「integration 1.0」と名付けました。3年後の姿を想定してはいますが、変化に対応して、1.1や1.2、あるいは2.0への計画変更もあり得るということを意味しています。