小型トラック「エルフ」の電気自動車(EV)(提供:いすゞ自動車)

 2021年にボルボ・グループのUDトラックスがグループ入りし、グローバル商用車メーカーとしての事業拡大を進めるいすゞ自動車。2030年をターゲットにした経営計画を発表し、意欲的な事業目標と投資計画を明らかにしている。また、既存事業の強みを生かし、電気自動車(EV)、自動運転も含めた全方位戦略を推進する点も特徴だ。その現在地を、同社の戦略、財務を統括する山口真宏氏に聞いた。

「積極性」を意識した企業理念に改訂

――世界の商用車市場の中で、いすゞの足元の業績をどう評価していますか。

山口真宏氏(以下・敬称略) 商用車市場全体の動向としては、各国でプラスマイナスはあるものの、全体的には堅調に推移しています。地域別では、米国の経済の強さが最もポジティブな効果を生んでおり、日本や豪州などの先進国では好調です。逆に、アジア新興国などは少し弱含んでいる状況です。

 世界経済の動きが強い時は、ものを運ぶ商用車の売れ行きも良くなります。また当社は、ディーゼルエンジンだけでなくガソリンエンジンのモデルも取りそろえ、市場のニーズに応えています。さらに、電気自動車(EV)の投入も進めています。全方位に商品を展開できていることが、マーケットの成長分野を取り込んで自社の成長につなぐことができている大きな要因だと思います。

――2023年に新たな経営理念体系「ISUZU ID」を策定しました。企業理念の再構築にはどんな狙いがありますか。

山口 2021年のUDトラックスのグループ入りによって、当社は連結売上高が3兆円を超える企業になりました。企業規模が大きくなったことに加え、グローバル企業であるUDトラックスという企業文化を取り入れたことで、これから当社が世界で戦っていく上での強力な武器を手に入れることができました。その強みを生かしていくためには、グループの全社員に対して責任と権限を明確にして、ダイバーシティを活用したイノベーションを起こしていかなければいけません。それはいすゞ自身がそう思うとともに、当社のステークホルダーからも求められていることでした。

 この自覚の下、私たち一人一人の社員が常に立ち返るべきいすゞの価値観を、改めて定義する必要があると考えました。