トヨタグループに属する豊田合成は、世界トップクラスのシェアを誇るエアバッグなどのセーフティシステム部品や内外装部品などを手がける大手自動車部品メーカーで、ゴムや樹脂などの高分子技術を軸に多様な製品を提供している。

 同社IT推進部主監兼デジタルラボディレクターの東立(ひがし・りゅう)氏は、2021年より同社に参画し「工場の課題をデジタルで解決する」取り組みを指揮している。その東氏が語る、日本の製造業がDXをうまく進めるための実践ポイント――経営と製造現場の巻き込み方や取り組むべき課題の選び方とはどのようなものか。

※本稿は、Japan Innovation Review主催の「第13回 ものづくりイノベーション」における「特別講演:豊田合成が進めるDX~日本の製造業がDXを実現するには~/東立氏」(2024年11月に配信)をもとに制作しています(役職等は講演当時のものです)

製造業でDXを生かせる3つの領域

 DXというと「デジタル技術をどう使うか」という入り方をしがちですが、そうするとなかなか課題にヒットしません。DXは技術ありきでなく、何が必要かという経営課題から始めることが大切です。

 企業によって経営課題は異なり、求められるDXもさまざまですが、日本の製造業でDXを生かせる領域は主に3つあると考えます。

 1つ目は、既存ビジネスの領域です。既存ビジネスにおいて、どうやって競争優位を確保するかといった点におけるDXの活用が考えられます。

 2つ目は、顧客や仕入れ先との関係といった領域です。顧客・仕入れ先と受発注をするために、情報をどうやり取りするかといったところにDXの活用が考えられます。

 3つ目は、社内の組織運営や働き方といった領域です。例えば、経営層に限らず開発・製造など各階層で意思決定が行われますが、その意思決定においてデータ分析などが活用できるでしょう。