「北京モーターショー2024(第18回北京国際汽車展覧会)」で、中国のEVメーカーNIOがバッテリー交換ステーションのデモンストレーションを行った(2024年5月)
写真提供:新華社/共同通信イメージズ

 電気自動車(EV)の普及に向けた課題である充電時間の長さや車両価格の高さ。その解決策として「バッテリー交換式EV」が注目を集めている。中国のEVメーカーNIO(ウェイライ汽車)は2600基以上の交換ステーションを展開し、欧州にも進出。日本でも三菱ふそうトラック・バスやいすゞ自動車が実証実験を実施するなど、特に商用車分野での導入に向けた動きが活発化している。

 一方で、規格の標準化や採算性など、実用化に向けた課題も山積する。こうした状況を踏まえ、バッテリー交換式EVの現状と可能性について、日刊自動車新聞社編集本部副本部長の畑野旬氏に聞いた。

EV充電の3つの方式

──まずは電気自動車(EV)の充電方式について整理したいのですが、現状は充電器とEVを直接ケーブルで接続する「コンダクティブ」が主流となっていますね。

【日刊自動車新聞】

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畑野旬氏(以下敬称略) 大きく分けて3つの方式がありますが、「コンダクティブ充電」が一般的です。ケーブルで直接接続するため、確実な電力の伝達が可能で、他の方式と比べコスト面でも有利です。

 ただし、特に急速充電器の場合、ケーブルが非常に太く重くなるため、取り扱いが女性には手間という声も聞かれます。メーカーはより軽く柔軟な素材の採用など、改善に取り組んでいます。

 次に、10年ほど前から実証実験が行われている「ワイヤレス充電」です。地面に埋設した送電コイルとEV側の受電コイルにより、非接触で電力を送電するシステムで、ケーブル接続が不要なため利便性が高いのがメリットです。

 例えば路線バスなどのように走行ルートが決まっている場合、バス停に設置することで駐停車中に充電することも可能です。

 現状では出力が15kW程度と伝達効率に課題があります。また、地中に設備を埋め込む必要があるので、家庭で導入する場合でも普通充電器より設置コストが高くなります。さらに、電磁波の影響を考慮した電波法の規制緩和や安全基準の整備なども必要になります。

 将来的には、道路を走行しながらワイヤレスで充電することも想定されていて、現在、技術開発が進められています。ただし、メーカーを問わずさまざまなクルマに対応する必要があるため、技術面のみならず充電規格の標準化などの課題も考えられます。

 最後に、今回のテーマである「バッテリー交換式」について説明します。