なぜ日本のメーカーはイノベーションが苦手なのか? マネジメント、ビジネスモデル、組織構造、企業文化、人材教育などをどう変えれば克服できるのか? 三菱自動車で世界初の量産型電気自動車「i-MiEV」(アイ・ミーブ)の開発責任者などを歴任したe-mobilityコンサルタント・和田憲一郎氏が、世界で進むEVシフトや時代の変化に適応するためのマネジメント法など、「新時代のモビリティ」について複眼思考で解説する。
第5回は、電気自動車(EV)の世界的な普及に伴い注目を集める「充電インフラ」について取り上げる。EV黎明期にEV用充電インフラはいかに考えられてきたのか。また、普通充電方式、急速充電方式はどのように生まれてきたのか。多様化する充電インフラとその将来像を語る。
EV用充電インフラの黎明期
電気自動車(以下EV)が世界的に普及するにつれ、充電インフラが話題として取り上げられることが多い。しかし、EVの場合、充電という機能は携帯電話と同じであるが、多くの電力をためる必要があることから、技術的難易度は高い。
では、EV用充電インフラの存在意義とはどのようなものであろうか。歴史をひもとき、EV用充電インフラについて筆者の考えを述べてみたい。
最初にEV黎明期の充電状況から話を始めたい。筆者がEV開発に着手した2005年頃、充電をどうするかがはっきりしていなかった。複数の自動車メーカーはEV試作車を作っていたが、車両を製作することが主目的であり、市場で充電をどうするかというところまで考えが及んでいなかったように思える。
EVとしては、2000年に日産自動車より少量生産されたハイパーミニという超小型EVがある。その充電方式は、当時としては珍しい電磁誘導を用いたインダクティブ方式であった。あまり聞いたことがないかもしれないが、当時は、現在の主流であるコンダクティブ方式(車載用ケーブルを車体に直接接続する方式)と、ハイパーミニが採用したインダクティブ方式の2つの方法があった。
インダクティブ方式とは、今でいうワイヤレス方式の一種であり、電磁誘導によりエネルギーの伝達を行う方式である。金属接点を持たず取り扱いが容易といった特徴があるが、専用の充電器が必要となるなど、普通充電方式としては、その後普及が進まなかった。