アダストリア 代表取締役社長 木村 治氏(撮影:川口紘)

「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ニコアンド(niko and ...)」などアパレルを中心に30以上のブランドを展開するアダストリアが好調だ。2024年2月期の連結営業利益は前期比56.4%増の180億円、売上高は13.6%増の2755億円と、ともに過去最高を記録した。好調の秘訣はどこにあるのか。アダストリア代表取締役社長の木村治氏に話を聞いた。(前編/全2回)

■【前編】過去最高益達成のアダストリア、木村社長が語る「マルチブランド戦略は非効率」という定説を覆せた理由(今回)
■【後編】アダストリアはなぜ「GMSの衣料品売り場」を手掛けるのか?木村社長が語る「ファウンドグッド」誕生の裏側

500億円の大台を達成したグローバルワーク

──2024年2月期決算で過去最高を記録し、業績好調です。要因をどのように捉えていますか。

木村治氏(以下敬称略) 2つあります。1つ目は、コロナ禍という、アパレル業にとって非常に厳しい環境の中で、未来への投資を止めなかったことです。

 私が社長に就任したのが2021年5月。当時、コロナ禍という外部環境の大変化を受けて、まず会長の福田三千男と中期経営計画を見直しの是非について話し合いました。店舗の休業を迫られ、先行きも多くの懸念材料がある状況でしたが、今後の成長を考えた時、事業計画を縮小させるのは好ましくありません。最終的には「中期経営計画通りに投資しよう」という意思決定を下しました。

 実際、2022年2月期には自社ECサイトの「.st(ドットエスティ)(現・and ST(アンドエスティ))」のリニューアルや本部のデータ活用施策などのシステム投資に36億円、成長ブランドの事業拡大など店舗開発に32億円を投資しています。そして、投資した結果としてサービス体験が向上し、ECの売上も伸びています。

 コロナ禍という未曾有の事態においても、うろたえることなく、未来の成長のタネをまいたことは今考えると非常に重要な決断でした。