商業デベロッパーとして小売業と不動産業のハイブリッド型ビジネスモデルを構築するパルコ。Z世代をはじめ若年層の高い支持を得る「渋谷PARCO」「心斎橋PARCO」や、シニア層の女性もターゲットとする「調布PARCO」など、幅広い顧客層に向けた商業施設を運営している。現在注力しているのは、データ活用を通した「優良顧客」の育成だ。同社は2018年、化粧品メーカーや小売企業でロイヤルティプログラムをつくってきたCRM(Customer Relationship Management)スペシャリストの安藤彩子氏を招聘した。「1回あたりの買い物金額を上げるよりも、『ライフタイムバリュー』の向上を目指したい」と語る安藤氏に、同社のマーケティング施策の狙いと内容について話を聞いた。
本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2023年10月11日)※内容は掲載当時のもの
PARCOを「継続的に」ご利用くださるお客様を増やしたい
――顧客のライフタイムバリュー、つまり顧客に継続してPARCOを利用してもらうことに主眼を置いているのはなぜでしょう。
安藤彩子(以下敬称略) これは私の信念なのですが、PARCOのCRMの考え方においては「1回あたりの買い物金額の多寡」ではなく「1人のお客様に生涯どれくらいご利用をいただいたか」をKPIに設定する必要があると思っています。
というのは、PARCOのビジネスにおいて収益性の安定した向上をはかるには、「PARCOファン」を増やす必要があると私は考えているからです。都心店舗であれ郊外店舗であれ、「あそこのPARCOに行けばいつも素晴らしい買い物体験が得られる/便利で何でも揃っている」というマインドを醸成しなければなりません。
販売促進としては高額利用を促すという施策を採用することもあるかと思いますが、ファン化においては長きに渡りお客様とお付き合いを続けることを重視しています。KPIに置く「ライフタイムバリュー(LTV)」でも、特に重要視するのは「バリュー」よりも「タイム」。つまりどれくらいの期間、PARCOを継続的にご利用いただけているかを見ています。1回あたりのご利用額が低くても来店頻度が高く、PARCOを「継続利用」してくれるお客様を増やしていきたいのです。