
トライアルホールディングスが西友を傘下に収めることになり、食品小売業界の地図が大きく塗り替わろうとしている。九州発のディスカウントストアから全国チェーンに成長したトライアルと、本州に特化したスーパーマーケットチェーンとなった西友。2社の統合がもたらす新たな可能性を探る。
有力視されたイオン、PPIHではなくトライアル
「多様なフォーマットの店を全国に展開しています。標準的な店舗を『スーパーセンター』と呼んでいて、4000平方メートルから最大で1万平方メートルの売場面積です」
3月5日17時半、トライアルホールディングス(HD)による西友子会社化の記者会見が都内で行われた。記者会見の冒頭、トライアルHDの亀田晃一社長は自社の紹介から始めた。流通業界では成長企業として知られているが、首都圏での知名度は十分ではないと思ったからだろう。
亀田社長は冒頭の言葉に続けて、「トライアルグループの特徴は、店舗開発に先立って、システム開発を進めてきたこと」と述べ、自社の強みがDX(デジタルトランスフォーメーション)であることを強調した。
トライアルHDは、投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が保有する西友株式の85%、ウォルマートが持つ15%の100%を買い取る。
2025年1月、KKRが西友株式の売却手続きを始めた時、入札に応じたのは、イオン、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)、トライアルHDなど数社。M&A(合併・買収)の実績、企業規模の面でイオン、PPIHが有力視された中、意外な決着となった。