
スーパーやドラッグストアなど、小売企業の地盤を超えた越境出店が増えている。とりわけ目立つのが、ディスカウント勢の攻勢だ。一方では業態の複合化も進んでいる。エリアを超え、業態を超えた越境出店競争が激化する小売業界は、まさに群雄割拠の戦国時代の様相。
勝ち抜くのはどこか。流通業界の専門誌、月刊『激流』編集長の加藤大樹氏に聞いた。
価格で戦うにはいいタイミングと判断
――小売企業の越境出店が増えているということですが、こういうことはこれまでにもあったのでしょうか。

1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘り。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ、製配販の健全な発展に貢献する情報を届ける。
加藤大樹氏(以下敬称略) なかったわけではありません。例えば、新潟を地盤としているアクシアル リテイリングは、1990年代の後半に長野や富山に出店しています。ただ、今はロピアやオーケーといったディスカウント勢が、積極的に越境出店を行っているところに特徴があります。
神奈川県に本社のあるロピアの場合、首都圏の1都3県に展開していたのが、2020年には関西に進出し、その後、中部、東北、九州などへ出店してきました。2024年にはイトーヨーカドーが閉めた北海道や東北の店も承継しています。一方、関東のディスカウントスーパーのオーケーは2024年、大阪に関西1号店を出店し、今年の1月には兵庫県に2号店を出しました。
その他にもパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、ドン・キホーテを今年(2025年)の2月に高知県に出店しました。これで同社は全都道府県での出店を実現しました。
また、もともと福岡を地盤としていたトライアルは中国地方や関西、さらに北海道、東北などへエリアを広げていき、2024年は初めて北陸と四国にも進出しました。ここ数年、節約志向が続いている市場環境の中で、ディスカウント勢は相対的にローコストですから、価格で戦って集客するにはいいタイミングと判断しているのではないでしょうか。
全体として、業績のいい企業が越境出店に前向きで、その点を捉えて「勝ち組の広域化」と形容する方もいます。