写真提供:渡辺広明

 2025年3月5日、九州を地盤としてディスカウントストアを展開するトライアルホールディングスが、米投資ファンドKKRから85%、残る15%の株式を世界最大のスーパーマーケットチェーンである米ウォルマートから取得。西友を7月1日付で完全子会社化すると発表した。今回の買収がトライアルと西友にとってどのような意味を持ち、店舗や商品がどう変わるのか──。コンビニに20年以上勤務、店長やバイヤーなどを経て現在は消費経済アナリストとして活動する渡辺広明氏が考察する。

「GMS四天王」時代からウォルマート傘下となった西友

 1980年代の昭和末期はGMS(General Merchandise Storeゼネラルマーチャンダイズストア)といわれる総合スーパーの時代だった。小売業界への就職を目指す学生の一番人気は百貨店からGMSに移り、西友はダイエー、イトーヨーカドー、ジャスコとともに「GMS四天王」と呼ばれていた。時代は令和となり、西友が総合ディスカウントストアの九州の雄であるトライアルに買収されるのは、平成デフレを経て節約思考が定着した日本の今を表していると言えそうだ。

 1956年に西武百貨店の一部事業から独立、西武ストアとしてスタートした西友の絶頂期は1980年代後半から1990年代初頭のバブル期だ。当時の西友は大都市圏では駅前の多層階に店舗を展開し、満員電車で都心に通う消費者をメインターゲットに売り上げを拡大していった。また、1977年に西友はプライベートブランド(PB)を展開。そのPBをベースに誕生したのが「無印良品」である。

 無印良品の商品は、1980年からはグループ企業である西武百貨店やファミリーマートの一部でも販売され人気を博す。1989年に西友から独立し設立された良品計画は、今では海外に進出するなど日本を代表する小売業になっている。

 この歴史を知る身としては、西友の元PBである無印良品の商品がローソンで全国販売されていることは、いまだに違和感を覚える。同時に、西友がGMS四天王と言われるほどの勢いがあったことが令和の時代に感じられる数少ない事象と言えよう。