トライアルホールディングス 取締役CDO 永田洋幸氏(撮影:内藤洋司)

 創業期から小売りとITの融合を進め、タブレット端末が搭載されたレジカートやAIカメラなど、テクノロジーを積極活用するトライアル。同社は小売りの現場で生成AIをどのように活用しようとしているのか。前編に続き、2023年12月、書籍『生成AIは小売をどう変えるか?』(ダイヤモンド社)を出版した永田洋幸氏に、トライアルが完全無人店舗に挑戦する理由、その実現に向けて生成AIを導入する道筋について聞いた。(後編/全2回)

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年6月5日)※内容は掲載当時のもの

圧倒的に生産性の高い店舗でなければ生き残れない

──前編では、トライアルが実践するリテールメディアの取り組みや、リアル店舗の将来像である「スマートストアテクノロジー」について聞きました。トライアルでは新業態の小規模店舗「TRIAL GO」も展開していますが、現在はどのようなテクノロジーを活用しているのでしょうか。

永田洋幸氏(以下敬称略) TRIAL GOは店舗を完全無人化する前段階として、決済や店舗マネジメントのDXを行うことによる省人化、生産性向上を実現する次世代型スマートストアという位置づけです。

 TRIAL GOでは、「AIカメラ」や酒類の無人販売ができる「顔認証セルフレジ」、電子棚札(商品の価格を表示する棚札をデジタル表示するデバイス)と連動して値引きシールの貼付作業をせずとも最適なタイミングで値下げができる「自動値下げ」などを開発し、完全無人化に向けて課題を1つずつクリアしていっているところです。

 同時に、無人店舗の開発にも取り組んでいます。この背景にあるのが、地方における働き手の不足です。トライアルの店舗がある北海道の某地域では、飲食チェーンの店舗が時給2000円で求人を出しても応募がなく、閉店に追い込まれました。

 では、都市部なら人手が足りているかというとそうでもありません。例えば、都内だけで見ると、日本人だけで店舗運営をしているコンビニも限られてきています。こうした状況下でも、私たちのような流通小売業は店舗が立地する地域の人たちの生活を支えていかなければなりません。

 お客さまに喜んでいただけるように、良い商品をある程度安価で提供し続けていくのが、私たちスーパーの社会的使命です。人手が少なくても、生産性が圧倒的に高い店舗を作らなければ使命を果たせないし、生き残れない時代は目の前まで来ています。そのとき、無人店舗は未来の選択肢に間違いなく入ってきます。