ローソン CS推進室 Knowledge & Insight シニアマネジャーの田中友紀氏(撮影:宮崎訓幸)

 コンビニエンスストア各社は近年、食品スーパーやドラッグストアといった業態とボーダレスな競争を強いられている。そんな中、ローソンは顧客セグメントを細分化することで、効果的な商品開発とマーケティングを実現しようとしている。なぜ顧客の“解像度”を高め、どのような施策を進めているのか。同社CS推進室 Knowledge & Insightシニアマネジャーの田中友紀氏に話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年5月9日)※内容は掲載当時のもの

年齢・性別だけでは顧客の姿は分からない

──ローソンは、ID-POS(ポイントカードから取得できる顧客の購入履歴)やIDレシートデータだけに頼らない顧客データの活用・分析施策を進めています。顧客理解を今まで以上に深めようとしているのは、なぜでしょうか。

田中 友紀/ローソン CS推進室 Knowledge & Insight シニアマネジャー

2021年ローソン入社。社長直轄の組織として、全社のお客さま理解・ファクトベースの意思決定を推進。前職は大塚製薬ニュートラシューティカルズ事業部でマーケティングを支援。キャリアの始まりは調査会社インテージでFMCGクライアントを担当。日本コカ・コーラにアカウントマネジャーとしてオンサイトし、グローバルのマーケティングを学ぶ。法政大学小川孔輔ゼミナール 21期生代表。

田中友紀氏(以下敬称略) 多様化する消費動向に対応するためです。コンビニエンスストアは食品スーパーとは違い、個人消費がメインの店舗です。つまり、家計を担当している人が家族のために購入するのではなく、個人のニーズに売り上げが左右されるのです。

 従来は年齢や性別といった大まかな顧客分類を行い、それぞれのセグメントに対応した商品を販売し、マーケティングを打つだけで、ある程度の売り上げを確保することが可能でした。

 しかし、現在はSNSの普及などによって消費者の趣味趣向が多様化しています。極端に言えば「10代後半の女性に支持されるスイーツが、シニア男性にも受ける」という現象すら珍しくなくなりました。そのため、これまでのように消費者の定型的なバックグラウンドを判断するだけでは顧客ニーズを取り逃がしてしまうようになっているのです。

 そこでローソンでは、ID-POSとIDレシートに独自のデータを加え、従来よりもきめ細やかに顧客の姿を捉えた商品開発体制の構築とマーケティング施策の実践を目指しています。

(ローソン公式HPより)

──具体的に、どんなデータ活用・分析施策に取り組んでいるのですか。