深刻な人手不足、物流2024年問題、業務効率化と生産性の向上──小売業が直面するさまざまな課題を解決すべく、あるチームが発足した。イオングループやライフコーポレーション、トライアルといった大手食品スーパーマーケット十数社のほか、ソフトバンク、日本マイクロソフト、パナソニックコネクト、富士通といったIT企業等の有志が集う「チームK.O」だ。
チームK.Oの活動と小売業の未来について4人のメンバーが意見を交わした。その座談会の模様を2回にわたってお届けする。参加者は、チームの設立人であるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(U.S.M.H)経営戦略本部経営企画部長の北村智宏氏とライフ営業戦略本部兼IT戦略部長の尾崎健氏、営業戦略本部本部長の田岡庸次郎氏、秘書・広報部兼サステナビリティ推進部部長の皆川剛氏。後編では、チームK.Oが具体的に解決していく課題について、特に商品マスタの標準化をどのように実現すべきかを4人が話し合った。(後編/全2回)
■【前編】ライフ創業者・清水氏の悲願「業界の地位向上」を果たせるか?小売業の課題を解決する有志団体「チームK.O」の全貌
■【後編】USMH、ライフの変革リーダーが「商品マスタの標準化が必要」と口をそろえるワケ※本稿
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20年前から悲鳴が上がっていた「バラバラな商品マスタ問題」
──チームK.Oで提言をまとめる業界課題として、「商品マスタの標準化」を一丁目一番地としています。なぜ、この課題の解決が必要なのでしょうか。
ライフ営業戦略本部兼IT戦略部長 尾崎健氏 ネットスーパー事業の立ち上げや電子棚札導入で、この問題に苦しんできた私から答えましょう。
商品マスタとは、小売業がメーカーや卸売業から商品が納品される際に取得する、商品名や商品サイズ、カテゴリー、メーカー名、商品画像などの情報がひとまとめになったデータを指します。商品マスタを自社のデータベースに登録することで、商品を管理しています。〇〇社の〇〇ビールは、「〇〇SD」という形で登録するようなイメージです。
問題は、この商品マスタが同じ商品なのにもかかわらず、会社の中でも他社の間でもバラバラになっていて、共通の規格が整備されていないところにあります。ライフの首都圏と近畿圏の店舗では、同一の商品を別々の商品マスタとしてデータベースに登録されているのが現実です。
同じ商品が別々に登録されていると、「商品マスタ」を調べ上げる、という作業が必要になります。今後、ネットスーパーをはじめデジタル技術を活用した新規事業を進めていく上で、この作業が大きな負担になってしまいます。また、労働人口が減少を続ける現在は少しでもムダな作業は減らしていく必要があるでしょう。
実は、小売業にデジタル技術を導入する必要性が叫ばれ始めた20年前から、商品マスタが標準化されていないことは問題視されていました。ライフだけでなく、他のSM(スーパーマーケット)さんのお話を聞いていると、各社とも同様の課題を抱えていることが分かったのです。「商品マスタがバラバラで、デジタル化が進まない」という声をよく聞いています。
商品マスタを標準化するためには、小売業が共通して使用する規格を設定する必要があります。小売業側が「商品のデータは、この規格に準じて発行してください」とお願いすれば、メーカーや卸売業も、それに応じてくれるからです。