出所:©Stanislav Kogiku/SOPA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ「ZUMA Press」
2023年の東京証券取引所の要請をきっかけとして、日本の上場企業のコーポレート・ガバナンス改革が再加速している。この加速によって「取締役会も従来とは異なる段階・ステージに移っている」と語るのは、2024年11月に著書『ミニ株主総会化する取締役会 令和に問われる新しいスタンダード』(日経BP 日本経済新聞出版)を出版した、森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士の澤口実氏だ。日本の上場企業の企業統治に今、どのような変化が見られるのか、同氏に話を聞いた。
企業統治の在り方を変えた「ある要因」
──著書『ミニ株主総会化する取締役会 令和に問われる新しいスタンダード』では、上場企業のコーポレート・ガバナンスが「従来とは異なる段階・ステージに移った」ことについて言及しています。これはどのような変化を意味するのでしょうか。
澤口実氏(以下敬称略) 端的に述べると、経営者自身がプロアクティブ(積極的)にコーポレート・ガバナンスを変える時代に来ている、ということです。
分かりやすい例では、2023年からPBR1倍割れを問題視する声が高まっていることが挙げられます。このきっかけとなったのは、東京証券取引所による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」と題する企業への要請です。
しかし、日本の上場企業においてPBR1倍割れが多いこと自体は10年前から指摘されており、繰り返し問題視されてきました。それがなぜか、2023年の東京証券取引所の要請をきっかけとして、大きく動き始めたわけです。この要請には強制力があるわけではないため、疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
では、10年前と現在では何が違うのかと言うと、「経営者自身のコーポレート・ガバナンスへの向き合い方」が変わってきています。
2023年に上場企業のコーポレート・ガバナンス改革が進展した要因は、投資家や取引所の動きというよりは経営者自身、特に「PBR1倍割れ企業」の経営者自身が持っていた本質的な問題意識に刺さったから、だと考えています。
このように、今は上場企業が株主や社外から指摘されるだけでなく、経営者自身がプロアクティブに自社を変えていく時代になったと言えます。まさにそのようなタイミングで東京証券取引所がトリガーを引いた、と捉えることもできるでしょう。






