写真提供:共同通信社、Ned Snowman/Shutterstock.com

 流通業界の中で図抜けた成長を持続してきたコンビニ業界に、異変の兆しがある。コロナ禍後に業績は回復したが、かつてのような出店ラッシュはすっかり影を潜め、一方で加盟店オーナーの高齢化や消費者の倹約意識の高まりという壁が立ちふさがる。この現状をどう打開するのか。

 流通業界の専門誌、月刊『激流』編集長の加藤大樹氏にコンビニ業界の現状と今後の見通しを聞いた。

<連載ラインアップ>
■第1回 「一気にドラッグストア大再編が進む可能性も」月刊『激流』編集長に聞く小売業界の注目動向
■第2回 総合スーパーの再編は最終ステージに突入? 月刊『激流』編集長に聞くGMS再編・改革の最前線
■第3回 セブン、ファミマ、ローソン…月刊『激流』編集長に聞くコンビニ業界「成長持続」のための打ち手(本稿)


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「価格以外の価値」をどう提供するか

――『激流」7月号の特集では、コンビニを巡る競争環境が激変したと記されています。どのように変化したのでしょうか。

【月刊激流】
1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘り。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ、製配販の健全な発展に貢献する情報を届ける。

加藤大樹氏(以下・敬称略) コンビニ業界はかつて、出店ラッシュの時代がありました。ところが2019年に、人手不足でコンビニの深夜勤務の従業員を確保するのが難しいフランチャイズ加盟店が、本部に無断で時短営業に踏み切ったことで24時間営業の見直しについて議論が起こります。もう続けるのは厳しいというオーナーが出てきて、出店ラッシュにブレーキがかかりました。

 そして新型コロナが始まると人流が途絶え、立地によっては経営が成り立たなくなる店も出てくる状態になりました。そこでコンビニ各社は、とにかく客が求めるものを提供しなければ立ちいかなくなると考え、冷凍食品や酒、大容量の菓子などを強化するなど品ぞろえを変え始めました。

 その後、コロナが落ち着いて各社とも業績は回復してきましたが、オーナーの高齢化や人手不足などの問題もあり、以前のような出店ラッシュはもう無理になり、今は既存店の売上をいかに伸ばすかが最大の課題になっています。人口減少時代ですから、パイは確実に縮小していきます。その中でいかに成長できるモデルにしていくかが大きな課題です。

――今は物価が上がり、消費者の倹約意識が強くなっています。コンビニ各社はどのように客を引き付ける工夫をしているのでしょうか。

加藤 コンビニは本部と加盟店オーナーで収益を配分しなければならず、値下げをしにくい構造にあります。そこで価格以外の価値を提供することが必要と言われています。

 そのための大きな工夫の一つは、やはり品ぞろえです。あったらうれしいと感じる商品、あるいはその店でしか買えない商品があると、客の来店動機につながります。そういう商品がそろっていれば、自店に来てくれることが期待できます。

 セブン-イレブンは今年2月、松戸市に「SIPストア」を出店しました。一般のコンビニの2倍くらいの売り場面積で、商品点数も約5300アイテムと、通常の約3300アイテムよりずっと多くそろえています。

 特に目を引くのが、生鮮食品や冷凍食品、日配品などを豊富にそろえていることす。店内で焼いた焼きたてのパンや、グループ会社である赤ちゃん本舗のベビー用品も置いています。この店で好評を得た商品は他の店にも展開していく方針ですが、焼きたてパンや冷凍食品は本部の予想を上回る売り上げで、パンは早くも既存店に展開することが決まったようです。