「日本のコンビニは今後、いかに発展を続けていくのか」を明らかにし、そこから変革に必要な学びを得てもらう、この連載。第2回は出店の変革だ。コンビニの出店戦略はある一定エリアに集中して出店する「ドミナント戦略」に特徴があり、セブン-イレブンもこの戦略を厳格に守りながら、日本で店舗数ナンバーワンのチェーンになった。ただ、この戦略には人口が少ない地域では出店が進まず、効果を発揮しないという欠点がある。この業界常識に立ち向かい、少子高齢化で人口が減っていく日本での新たな出店方法を模索するローソンの取り組みを紹介しよう。
日本にコンビニが登場して50年超。その便利さから、日本の生活者の嗜好や行動、生活スタイルをも変える存在となったが、その背景にはコンビニ各社のたゆまぬ努力があった。このシリーズでは、日本のコンビニ業界を大きく成長させたの変革の歴史を紹介する。そこにはこれからの日本経済を成長させるヒントがある。
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稚内市のローソンは既存の店舗と150キロも離れている
2023年、日本最北端の市、北海道稚内市へ、ローソンが初出店を果たした。8月1日に「稚内栄五丁目店」と「稚内こまどり五丁目店」を同時オープンさせたのに続き、8月25日には北海道日本ハムファイターズとのコラボレーション店舗「ファイターズローソン稚内はまなす店」を開設している。
このニュースは道内で大きく報じられ、開店日に店舗を訪れた市民の「待ちに待った」コメントを地元テレビ局が報じるなどした。コンビニのオープンで何を騒ぐのかと、訝しく思うであろうが、それには理由がある。稚内市を含む10市町村の宗谷地方は「大手コンビニ未踏の地」であるからだ。
北海道でも札幌市では普通に見掛けるセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンの店舗が宗谷地方にはなく、3大チェーンの店舗が初めてできたのが、今回のローソンの店舗である。
実は稚内市に出店したローソンから最も近い既存のローソンがあるのはオホーツク海側の雄武町(オホーツク地方)と日本海側の小平町(留萌地方)と、ともに距離は150キロ前後も離れている。いわば、今回の出店は「飛び地への出店」で、ローソンの配送トラックは、その間、どこにも寄らずに商品を積んだまま北上し、非効率な配送になる。
ちなみにセブン-イレブンで最も北にある店舗は北海道の美深町(上川地方)の店舗で、稚内市の南、約140キロの位置だ。美深町(人口3800人)と、その南の名寄市(2万5000人)、さらにその南の士別市(1万7000人)の3市町にセブン-イレブンは現在10店舗で店舗を配置している。
人口3万1000人の稚内市に、なぜ、セブン-イレブンをはじめ、大手コンビニチェーンは創業から半世紀にわたって出店してこなかったのか。
それは美深町と稚内市の間にある中川町(人口1300人)や幌延町(人口2100人)、豊富町(人口3600人)は人口が少なかったからだ。そうした地域にフランチャイズチェーンとしてコンビニを出店していっても、すぐに人口に対してコンビニの店舗数が飽和してしまい、経営が成り立たない店舗が出てきてしまう。その結果、集中出店によるドミナントエリアを築けないのだ。