
型破り、というか、正直ちょっと変…35期連続増収増益という圧倒的成長力を誇る総合ディスカウント店「ドン・キホーテ(ドンキ)」。流通・小売業を代表する一大カンパニーへと飛躍した原動力は、「顧客最優先主義」と「権限委譲」という独特の企業風土にあった――。本稿では『ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました』(吉田直樹、森谷健史、宮永充晃著/日経BP)から内容の一部を抜粋・再編集。ドンキやパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)のキーパーソンの話を通じ、ユニークで大胆な経営やマーケティング手法の本質に迫る。
ドンキの社長には「他社の社長のような権限はない」と言うPPIHの吉田直樹CEO。現場への「権限委譲」がいかにして会社の成長につながったのか、吉田氏の言葉を通して探る。
ドンキでは、管理はしない

僕が入社してから、一番たくさん受けると言ってもいい質問が「あんなに大量の商品をどうやって管理しているんですか?」です。会う人、ほぼ全員に聞かれたかもしれません。正直言うと、一番困る質問でもあります。苦笑っぽい感じでしょうか。
なぜかというと、「ドンキでは、管理はしない」というのがその答えだからです。
「管理」というのは、チェーンストア的な発想だと思います。しかし、僕たちドンキでは、何か本部とかエライ人が管理する…とかではなく、担当者が必死に棚を確保した商品ですから、各人が責任を持って在庫を管理する、従って、会社としては管理しない…というのが正解なんですね。
大量の商品(小規模の店で5万アイテム、大規模な店で10万アイテムというイメージでしょうか)を少数の人が管理するチェーンストアを前提に質問を受けると、この答えはなかなか納得されないんじゃないかと思います。
その代わり、当社では管理はしませんが、厳しい評価はあります。会計上の在庫の期限は1年と定められていますが、当社では、6カ月を超える在庫は「不稼働在庫」、そして、3カ月を超える在庫は「興味期限切れ」、という評価をされるので、管理はしなくても、売れなくてもいい、ということにはならない、ということです。