
総菜や弁当などの中食(なかしょく)市場に大きな変化が出始めている。増える一方のコストを吸収し切れず、各社ともに値上げせざるを得なくなってきた。ただし、単純な値上げではお客に選ばれなくなってしまう。価値と価格のバランスを取る値上げ、これが今の中食市場のキーワードだ。
スーパー、コンビニ、ドラッグストアはそれぞれ、この激変にどう対応しているのか。流通業界の専門誌、月刊『激流』の加藤大樹編集長に聞いた。
原材料、とりわけ米価の高騰に腐心する中食市場
――小売業界では総菜や弁当などの価格戦略が大きく変わり始めているようですが、具体的にはどのような背景の下で、どのように戦略を変えているのでしょうか。

1976年、製配販にまたがる流通業界の専門誌として創刊。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、百貨店など、小売業の経営戦略を中心に、流通業の今を徹底的に深掘り。メーカーや卸業界の動向、またEコマースなどIT分野の最前線も取り上げ、製配販の健全な発展に貢献する情報を届ける。
加藤大樹氏(以下、敬称略) 背景として大きいのはコスト増で、中でも大きいのが米価の高騰です。弁当の場合、麺類などを除けば基本、主食が米飯ですので、米価の高騰は打撃が大きい。スーパーは今各社とも、寿司に力を入れていますが、これもシャリを使いますから影響大です。
それに加えて人件費の上昇もコスト増の大きな要因です。今はどこも人手が不足していて、コンビニや大手スーパーはプロセスセンター(工場)に総菜や弁当作りの作業を集約しているところが多いのですが、その工場でも人手が足りなくなっていて、外国人を雇って何とか回しているという状況です。
米価だけではなく野菜などの原材料の価格も上昇していますし、包装費なども上がっていますので、端的に言えばもう値上げするしかないというのが小売業界の趨勢です。
総菜市場はコロナ禍で一時低迷しましたが、基本的には伸び続けていて、今はもうコロナ前の水準以上の規模になっています。2024年は11兆円越えが確実視されています。
もともとは単身者が最大の需要層でしたが、今は生鮮品などの価格が上がったため、素材を買って自分で調理するより、むしろ総菜を買った方がコストパフォーマンスがいいと考えられるようになり、あらゆる世代・世帯にニーズが拡大しています。