写真:アフロ

 セブン&アイ・ホールディングスがイトーヨーカ堂の直営アパレル事業からの撤退を決め、イオンリテールも苦戦が続くGMS衣料部門の試行錯誤を繰り返している。地方量販店の衣料部門も肌着・靴下などの実用衣料はともかく、アパレルはコンセに切り替えて直営売場は年々縮小している。GMSの衣料品(アパレル)は消えていく運命なのだろうか。

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■イトーヨーカ堂はなぜ直営アパレル事業から撤退せねばならなかったのか(本稿)

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イトーヨーカ堂の衣料品売り上げはどのように下がっていったのか

 直営アパレル事業からの撤退を決めたイトーヨーカ堂衣料部門の売り上げはピークだった1996年2月期の4568億円から2006年2月期には3073億円に減少。直営衣料売り上げは15年2月期には2000億円を割り込み、21年2月期には1000億円も割り込んだと推計される(21年2月期以降は住居余暇と合わせたライフスタイル部門として開示)。直近の23年2月期は900億円を割ったと推計されるが、実にピークから5分の1以下への激減だ。

 イトーヨーカ堂商品売り上げに占める比率も、96年2月期は35.3%もあったのが06年2月期には24.9%と10ポイント以上低下し、19年2月期は14.8%とさらに10ポイント下がり、23年2月期は12.3%ほどに落ちたと推計される。

 稼ぎ頭だった衣料部門が02年2月期には営業赤字に転落し、以降は浮上しなかった。

 量販店やスーパーマーケット、ホームセンターの大手チェーンが加盟する日本チェーンストア協会の販売統計でも、00年から22年で年計売り上げが18.4%減少したのに対して衣料品売り上げは73.8%も減少しており、中でも婦人衣料は79.8%減と5分の1に激減している。総売り上げに占める衣料品売り上げのシェアも、同期間に17.25%から5.54%と3分の1以下に低下した。

 この間にしまむらの売り上げは2193億円(01年2月期)から6161億円(23年2月期)と2.8倍に、ユニクロ国内事業の売り上げは2244億円(20年8月期)から8102億円(22年8月期)と3.6倍に急増しているから、低価格衣料の購入先が量販店衣料売場から衣料品のカテゴリーキラー(SPAとは限らない)に流れたことは間違いない。

 統計によって誤差はあるものの、この間に衣料品の国内市場は単価ダウンも響いて15兆6400億円から7兆8500億円ほどに半減しており(12年以降はインフレに転じて購入単価は14.1%上昇し数量減に転じている)、その減少率を割り引いた量販店衣料売り上げの減少額と実際の減少額2兆717億円との差額6741億円ほどがユニクロやしまむらなど衣料品カテゴリーキラーに流れたものと推察できる。