1979年3月に早稲田大学法学部を卒業後、イトーヨーカ堂に入社。その後、プライスウォーターハウスコンサルティング、財団法人流通経済研究所を経て、90年9月リテイルサイエンスを設立。ドラッグイレブン社長、成城石井社長、セブン&アイ・ホールディングス常務執行役員を経て、リテイルサイエンス社長に復帰。2021年3月西友社長兼CEOに就任。

 西友は、米国投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と楽天(現・楽天グループ)が共同出資する形で新たな経営体制をスタート。昨年3月にセブン&アイ・ホールディングス(HD)の元幹部だった大久保恒夫氏が社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した。今春からは楽天グループと連携し、OMO(オンラインと実店舗の融合)戦略を本格化させている。改革の旗を振る大久保社長に現在の進捗などについて聞いた。

改革の要諦は商品力と販売力を強化し、利益を上げること

――大久保さんは元々、イトーヨーカ堂にいて、鈴木敏文氏(前セブン&アイ・HD会長)の下で業務改革を推進した。その後、コンサルタントとしてユニクロや無印良品の改革に関わり、プロ経営者として成城石井の社長も務めた。それらの小売業でみられた問題点は何だったのですか。

大久保 企業再生、改革を進めるときに重要なのは、いかにして利益を上げるかということです。小売業は今、利益が出しづらくなっているのです。そのためには価値を創造することです。高度成長期は商品を置いておけば売れました。成熟期に入り、需要を供給が上回る中で「小売業の価値とは何か」を考えなくてはなりません。

 そこで私が重要だと考えるのは商品力と販売力です。メーカーが作ったナショナルブランドを安売りするだけでは利益は上がらない。だから、生産・原材料段階まで踏み込む商品開発力を強化することが重要です。また、その商品の良さをアピールして売り込む販売力も必要になる。商品力と販売力を強化し、利益を上げるという改革を今まで手掛けてきました。

――成城石井のSPA(製造小売業)的な取り組みが注目されています。当時からスーパーマーケットでもSPAを目指していたのですか。

大久保 そうですね。成城石井は海外商品を中心に独自のルートで商品を調達してきた強さがありました。ただ、2004年にレインズインターナショナルの子会社となり、売り上げが減少し、安売りを始めて利益が半減するなど苦戦していました。07年に私が社長になって商品力を強化。世界中を歩き回って商品を発掘した他、高質なオリジナル商品を開発。惣菜工場を持っていたので、惣菜を強化することで集客や売り上げにつながり、飛躍的に業績が向上。利益が出るスーパーマーケットになりました。