2000年にイケア・スウェーデンに入社。ポーランドのカントリーセールスマネジャーを経て、イケア・ポーランドの副社長などを歴任。その後、ベッドルーム部門のグローバルビジネスエリアマネジャーとして、商品展開に関わるビジネス戦略の立案、製品開発などの責任者として活躍。21年8月から現職。

 2020年に都心型店舗を出店し、オンライン、郊外の大型店舗それぞれのタッチポイントを生かしたオムニチャネル化を進める一方で、脱プラスチックやサーキュラービジネスへの転換など、サステナビリティの拡充に取り組むイケア・ジャパン。8月に代表取締役社長およびCSO(Chief Sustainability Officer)に着任したペトラ・ファーレ氏に、同社のサステナビリティとオムニチャネルの戦略、そして日本のサステナビリティの可能性について聞く。(インタビュー・構成/会田晶子)

<編集部からのお知らせ>
イケア・ジャパン株式会社CEO兼 CSOのペトラ・ファーレ氏も登壇するオンラインイベント「第10回リテールDXフォーラム」を、2022年11月28日(月)、29日(火)に開催します!
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ペトラ・ファーレ氏による「イケアのオムニチャネル戦略とサステナビリティの取り組み」と題した講演のほか、小売業界の革新的な第一人者ダグ・スティーブンス氏の「小売サプライチェーンの変革」、セブン&アイ・ホールディングス伏見 一茂氏の「7iDデータ利活用とCRM戦略」など、小売業ならではのDXの進め方について学べるオンラインセミナー「第10回 リテールDXフォーラム」(参加登録受付中)

「サステナビリティ」を全ての業務に組み込み、ビジネスと両立させるために

――企業にとってサステナビリティは、同時にビジネスを成長させるものでなくてはなりません。イケアがこれを両立できている理由は何でしょうか。

ペトラ 意志の固さと決意です。例えば「手ごろな価格」と「サステナビリティ」は、私たちの創業の精神に含まれていることであり、その両立は特別なことではありません。実現する手段としては「ニーズを見つけて、これを満たす解決策を探す」ということに尽きると思っています。

――解決策を探すために、AIなど新たなテクノロジーの活用も欠かせませんね。

ペトラ それは、もちろんです。スウェーデンには「1+1=3」という言葉がありますが、テクノロジーと人間の意志を組み合わせることによって発揮される超能力が、まさにこれです。例えば、私たちはAIの力を借りて、食品ロスを最小限にしました。日常業務の中にテクノロジーを取り入れ、同僚の意識を向上させることによって、スピーディにこれを達成することができたのです。

――ペトラさんはCEOとCSO(Chief Sustainability Officer)を兼務されています。その役割はどのようなものですか。

ペトラ 私たちは2030年に向けたサステナビリティ戦略として「People & Planet Positive」、環境と社会への配慮を掲げています。私がCSOの任に就くことは、この戦略を私たちがどれだけ真剣に捉えているかを表わしています。誰かに一任するのではなく、サステナビリティは全ての従業員の日常業務に組み込むべき重点となる業務(Key Job)だと考えています。

 私たちはビジョンとともに8つの主要な価値観(Key Value)を持っていますが、全ての従業員はこれを理解し、同じ信念を持ってこれを体現してくれていると思っています。

日本におけるサステナビリティの実現の鍵とは

――日本で生活される中で「プラスチックショック」を受けられたそうですね。

ペトラ はい。日本で買い物をして、家に帰った後に捨てるプラスチック類の多さに驚きました。スウェーデンの暮らしに比べて、あまりにも膨大でしたので。例えば、野菜やフルーツもトレーに入ってラップが巻かれています。これは今後、日本において、大きな差異を生むことができる領域だと思います。

――日本の小売業はどのようにサステナビリティに取り組むべきでしょうか。

ペトラ 例えば日本では、店舗でのプラスチック袋の有料化に踏み切った後、多くの人がエコバックを持って買い物するようになりました。従って、企業は、もっとお客さまを信じて、チャレンジングなゴールへ導くということができるのではないかと思っています。

 アドバイスをさせていただくとすれば、消費者との関わりを持つことです。従来の慣れたやり方とは違うことを考えて、チャレンジを投げかけることをしてほしいと思います。

――イケア・ジャパンも消費者に向けて、店舗やオンラインを通じてサステナビリティへのチャレンジを伝えようとしていますね

ペトラ それは、私たちにとっても最大の課題です。世界中で多くの人々が、気候変動などサステナブルな目標に貢献したいという思いを持っており、しかし、どのようにやるのかが分からない状況にあると思います。企業として消費者と対話して、認知・認識を高めていく必要があります。当然、1社でできることではなく、協力してやっていかなければならないと考えています。

 ただ、日本ではもともと「もったいない」という、地球の資源を無駄にしない考え方が文化に内包されています。この点で、比較的進めやすいのではないかと期待しています。

EC、アプリ、都心型店舗。イケア・ジャパンのオムニチャネル戦略

――Covid-19のパンデミックによるEコマース(EC)の高まりをどのように捉えていますか。

ペトラ パンデミックは、消費者行動を前倒しに変容させました。消費者は、安全に購買したいという欲求をかなえながら、どこでどのように買うのかを選べるようになったのです。私たちもこのニーズに応えて、オンライン・オフラインの両面でより早く、安価に製品やサービスを提供しています。例えば、イケアアプリでは、店舗で商品をスキャンしてより迅速に決済することができますし、オンラインで買うこともできます。

――日本で出店している都心型店舗も、消費者の購買行動の1つのオプションになるということでしょうか。

ペトラ その通りです。私たちは新しい店舗の業態を開発して、さまざまな試みを検証しています。例えば、都心型店舗はお客さまが来る頻度が高く、郊外の店舗では滞在時間が長くなります。都心型店舗には多くの人が来やすいという利点がありますが、その分、小型で、商品の数は少なくなります。その点をECやアプリで補い、フルで体験したい場合は郊外の大型店舗へ、といったようにタッチポイントごとのニーズに応じて顧客体験をつくります。都心型店舗、大型店舗、EC、アプリ、それぞれタッチポイントという形で見ているのです。

――日本における今後の取り組みを、お話しいただける範囲で教えてください。

ペトラ 2024年に前橋に開店する新店舗は、最もサステナブルな店舗になる予定であり、私も大変楽しみにしています。私たちはオンラインだけでなく、物理的にもお客さまともっと近しい場所にいたいと思っており、その拠点の1つになることでしょう。また、商品受け取りセンターも今後10カ所以上を展開していく予定です。

 日本の文化に合わせるという意味では、ポップアップショップが興味深いです。ポップアップの店舗が現れると、皆さんは逃したくないと長蛇の列をつくります。物理的にお客さまとつながれるというポイントとして、チャレンジしたいです。

グローバル企業として「人々の生活に情熱を燃やす」ということ

――グローバル企業として、ローカルの文化や生活習慣をどのように捉え、対応しているのでしょうか。

ペトラ 私たちは「Life at home」、家庭での生活、人々の生活に情熱を燃やしている企業です。そしてグローバル企業ですので、人々が家で「何を(What)」するのかは世界中で非常に似通っていること、そして「どう(How)」するのかが非常に異なっていることを知っています。そこを文化的な違いとして理解することが重要だと考えています。

 多くの人々にアンケート調査も行っていますし、家庭訪問をして、実生活の空間でどのように過ごしているかを観察させてもらうこともあります。

――最後に日本の読者にメッセージをお願いいたします。

ペトラ これから日本において、お客さまと共創(co-creation)していきたいと思っています。そのためには、お客さまが何を求めているかを考えながら、対話を続けていくことが重要だと感じています。サステナビリティだけではなく、自宅での毎日をより良くするためにはどうしたらいいのか、あらゆる方々の声やご意見を聞かせていただきたい、歓迎したいと思っています。

 

「第10回リテールDXフォーラム」の講演では、ペトラ・ファーレ氏が、同社のサステナビリティとオムニチャネル戦略の内容について、より詳細・具体的に語ります。

 11月28日(月)、29日(火)に開催される「第10回 リテールDXフォーラム」では「イケアのオムニチャネル戦略とサステナビリティの取り組み」と題し、イケア・ジャパンが推進するサステナビリティとオムニチャネルの取り組みを紹介する。

 「リテールDXフォーラム」ではこの他、小売業界の革新的な第一人者ダグ・スティーブンス氏の「小売サプライチェーンの変革」、セブン&アイ・ホールディングス伏見 一茂氏の「7iDデータ利活用とCRM戦略」など全13講演が予定されている。

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