三井不動産は、NTTデータ、TSIホールディングス等と協力して、入店率を高めるビジュアルマーチャンダイジング(以下、VMD。視覚的な販売戦略)改善の実証実験を行った。店頭のディスプレーをお客さまに見てもらえたか、VMDがきっかけで入店につながったかを、AIカメラ等のデータ解析を通じて検証する。
VMDは「Visual merchandising」の略称。マネキンに着用させるコーディネートによって店舗の前を通行するお客さまの入店を促したり、棚やラックの商品陳列を色や商品分類で見やすくすることで店内の滞在時間を伸ばすなど、販売員が直接接客をしなくても販売や売り上げにつながるようにする仕組みを指す。
一般的に商業施設内の客数は多いため、これまでテナントは自店の前をいつ、どういったお客さまが通行しているかを正確に把握することが難しかった。また、販売員が日々考えるマネキンのコーディネートやディスプレーといったVMDは、どこまでお客さまの心をつかんだかが分かりにくいという課題があった。VMDをきっかけとした入店率は、定性的に決定されてきたのが実状だ。
三井不動産のDXグループ技術統括を務める越智将平氏は、実証実験を行った背景についてこう語る。
「各店舗での運営は基本的にテナントにお任せしているものの、商業施設として各店舗に協力できることはないかと感じて今回の実証実験に至った。AIカメラで共用通路を撮影するなど個店では完結しづらい部分をサポートすることで、集客にも貢献できるのではないかと考えた」
三井不動産でDXグループ技術主事を務める岩本昌丈氏も、現在のお客さまの購買動向と施設の状況を解説する。
「ららぽーとTOKYO-BAYは大型商業施設なので、あらかじめ目的を決めての来店だけでなく、館内をぐるぐる回る中でショップを認知して入店するお客さまも多い。入店率を上げることは売り上げにもつながるため、お客さまとテナントとのマッチングを商業施設側としてもサポートしたい」
実証実験店舗に選んだ「ナノ・ユニバース」は、ららぽーとTOKYO-BAYの中でも集客力があり、運営元のTSIホールディングスがデジタルやオムニチャネルにも注力していることから決定した。
<実証実験について>
・実証実験期間:2022年10月15日(土)~11月28日(月)
・実験店舗:三井ショッピングパークららぽーとTOKYO-BAY「ナノ・ユニバース」
・店舗面積:約80坪
・店舗内設置機器/AIカメラ2台、赤外線センサ4台、デジタルサイネージ1台
・カメラ画像データの扱い:お客さまの年代・性別等の推定および視線や反応の把握のためにカメラ画像を活用。撮影した画像データは集計された数値データのみとして使用する。撮影した画像データは解析後自動的に破棄することで、お客さまの顔などの個人情報は直接確認できないようにする。