陣屋(神奈川県秦野市)

 宿泊業ながら週休三日制を採用し、営業日である月曜日も日帰りプランのみ受け付け。自社サイトと電話からの直接予約だけで運営するのは、神奈川県秦野市の老舗旅館・陣屋だ。企業価値評価の指標であるEBITDA(営業利益と減価償却費の総和)は30%と、業界内外でも高利益率を誇る。

 家庭の事情で、宮﨑知子さんと夫が陣屋を継承したのは2009年。2人とも全く観光業の知識がないところからのスタートで、当時の経営状況は6000万円の赤字だった。何か打開策はないかと、夫が勉強会に出席してホテルシステムを学ぶ際に「クラウド」を知ったことが変化の始まりだった。

観光業経験ゼロから陣屋の経営を軌道に乗せた宮﨑知子さん。2017年より代表取締役 女将を務める

「部屋数の多いシティホテル向けのシステムは私たちのような小さな旅館には高額過ぎて、欲しい機能も不足していました。当時はまだクラウドが一般的ではありませんでしたが、夫がエンジニア出身だったこともあり、『欲しいものがないなら作ろう』と思い立ったのです」と代表取締役 女将の宮﨑知子さんは語る。