今、建築業界でDXが迫られている。業界内の人手不足や担い手の減少が深刻さを増しているためで、デジタル活用による省力化や生産性向上の切り札としてDXの推進が欠かせなくなっているのだ。建築部門と住宅部門を持つ大和ハウス工業も例外ではない。2019年より「現場の無人化・省人化」をキーワードに「デジタルコンストラクションプロジェクト」を開始し、デジタル技術を活用した設計、施工作業、施工管理の省人化・無人化などを進めている。果たして大和ハウス工業はDXでどこまで建設現場を変えようとしているのか。同社上席執行役員 技術統括本部副本部長の河野宏氏に聞いた。
働き方改革の柱になる「デジタルコンストラクション」
業界が抱えている喫緊の問題として、技能労働者(以下、技能者)の高齢化ならびに人手不足がある。国土交通省が示す就業者数の推移は別掲表の通り。技能者、いわゆる職人の数は1997年の455万人をピークに減少し、2020年は318万人へとおよそ3割も減少。年齢構成は55歳以上が約36%、29歳以下が約12%と若い世代になるほど割合が小さくなっており、次世代への技術承継が大きな課題となっている。
日本全体の人口減少という問題もあるが、若い人が建設業界に入ってこない現状がある。事態を重く見た国も「新・担い手3法」を制定し、建設業界における働き方改革の枠組みを示している。現場の生産性向上により、長時間労働の是正や建設労働者の給与の確保、週休2日の実現などを促しているのだ。
大和ハウス工業ではこうした社会的要請にもいち早く応えるため、2019年の7月に「デジタルコンストラクションプロジェクト」を開始した。
河野:われわれの住宅産業では、そこで働く人がいなくなったら地域の担い手、守り手がいなくなってしまう。そういう危機感が切実になっています。このままでは、自然災害が大型化し、また頻発する中で、その地域の住宅に住む人を守っていけなくなることにもつがなりかねません。
当社としても速やかに働き方改革を遂行して担い手を確保し、その中で建設業が直面する社会課題の解決へ向けてしっかり取り組んでいくためにこのプロジェクトをスタートさせました。奈良に大和ハウスグループの新研修センターを作ったのもその一環です。技術部門をベースにして働き方改革と人財の育成に投資をしているところです。