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 建設業法、公共工事品質確保促進法(品確法)、公共工事入札契約適正化法(入契法)、測量法を一体的に改正した「第3次担い手3法」が2024年6月に成立した。担い手の確保などを通じて建設業を持続可能な産業にするための改正を受けて、業界はどう対応しようとしているのだろうか。

 日刊建設工業新聞社取締役待遇編集局長の遠藤奨吾氏に聞いた。

現場で働く技能者が減っている

――担い手3法は今回、第3次の改正ということですが、第1次からどのような変遷を遂げてきたのでしょうか。

【日刊建設工業新聞】

1928年(昭和3年)から刊行され、読者数約34万人、その7割を建設産業関連の経営者・役員が占める。国内外の最新業界情報に加え、建設業界のキーマン、現場で活躍する人々のインタビューも掲載。毎年東京と近畿で「建設技術展」を主宰するなど、紙面に止まらない情報発信も行う。
「建設技術展2024 関東 」(https://www.decn.co.jp/kengi2024/)を11月13、14日に開催します。

遠藤奨吾氏(以下敬称略) 10年前の第1次改正では受注者の適正な利潤確保を発注者の責務とし、担い手の確保・育成に向けて業界と国が積極的に関与することが明示されました。多様な入札契約方式の導入など工事の品質確保で必要な基本的・具体的措置を規定しています。5年前の第2次の改正では、工期の適正化の他、下請けの処遇改善に向けた発注者・受注者の責務を強調しました。

 現場で働く人たちが疲弊せずに働けるようにし、持続的な建設業にするため、発注者や元請け側の責任の大きさを明確にしてきたのがポイントでした。

 今回の第3次の改正では、現場で働く職人たちの処遇や労働環境などを改善することにより重点が置かれています。その背景にあるのが深刻な人手不足です。専門工事業の入職者の減少傾向は一段と強まっており、このままでは産業としての持続可能性が揺らいでしまうという危機感が建設業界全体にあります。

 元請けのゼネコンにしても下請け企業の労働者がいなくなったら、自分たちだけでは工事ができません。だから現場でものづくりを支える職人たちに適切な賃金がきちんと行き渡るようにして建設産業の持続可能性をしっかり担保できるようにしていこうというのが大きな目標です。

 公共工事に関するルールは国主導で調整しやすく、入札契約の当事者らにルールを義務付けるのも比較的進めやすいのですが、民間同士の契約にはなかなか関与できません。だから今回の改正では民間工事を含めた建設業全体の最低ルールの底上げが狙いとなります。公共工事で先導的な取り組みを推進し、民間工事への波及を促す流れを見据えています。

――現場の人手不足は少子高齢化が一つの大きな要因でしょうが、それ以外に若い人が建設産業以外の産業に流れていってしまうというようなこともあるのでしょうか。