人手不足が深刻化する建設業界。4月から時間外労働の上限規制が適用されたこともあり、官民こぞって現場の生産性向上に向けた取り組みを強化している。そこには建設業界ならではの難しさがある半面、働きやすい環境をつくりたいという建設業界の“悲願”も込められている。
建設業界のDXについて、日刊建設工業新聞社取締役待遇編集局長の遠藤奨吾氏に聞いた。
<連載ラインアップ>
■第1回 「新4K」が人材不足解消の鍵に、日刊建設工業新聞社編集局長に聞く建設業界の今
■第2回 「i-Construction2.0」で3割の省人化は可能か? 日刊建設工業新聞社編集局長に聞く建設業界のDX(本稿)
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国土交通省の「i-Construction」の狙い
――建設業界は人手不足が深刻ということもありICT化、DX化が大きな課題になっていますが、今日に至るまでどのようにデジタル化が進んできたのですか。
遠藤奨吾氏(以下敬称略) 国土交通省はICTなどの技術を積極的に導入し、建設現場の生産性を向上させる取り組みである「i-Construction(アイコンストラクション)」を2016年度から本格的に開始しました。これは建設機械メーカーのコマツが「スマートコンストラクション」といって、ICT建機などを活用し工事での人や機械、土などに関わる情報を一元的に管理しながら施工品質の確保や工期短縮などに貢献するサービスを展開し始めた頃と時期が重なっています。
これ以後、建設業界での現場のデジタル化は、建設機械を中心に先進的な技術やサービスが導入され、建設会社がそれらを利用するという形で進んできました。大手企業などは別として、こうした先進技術を建設会社が独自で開発するのは難しく、メーカー主導による技術革新が現場の生産性向上に大きく寄与した一面はあります。
公共工事の現場等では、ドローンによる3次元測量などを実施し、施工や検査に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぐなど、新たな建設手法が段階的に導入されてきました。
――設計の領域でもデジタル化は進んでいるのですか。
遠藤 設計分野ではBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)と称して3Dモデルへ構造物に関するあらゆる情報を格納し利活用する取り組みがあり、設計から施工、管理までの情報共有を3Dモデルで行う流れが広がっています。日本では、BIMは建築、CIMは土木・インフラというように使い分けていますが、国際的には3D化の取り組み全般をBIMとし、日本のCIMはBIMの一部とされています。