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 1990年代半ばから2010年代序盤にかけて生まれた「Z世代」。自己実現やワークライフバランスを重視する「新しい価値観」を持つとされ、唐突に離職する場合もあることから、マネジメントに苦慮する企業は少なくない。こうした現状に対し、有効な対策はあるのか。本連載では、『Z世代の社員マネジメント 深層心理を捉えて心離れを抑止するメソドロジー』(小栗隆志著/日経BP 日本経済新聞出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。のべ45万人のデータから定量的に捉えたZ世代の特徴をベースに、「働く人間の心理」に着目したZ世代のマネジメント法を解説する。

 第6回は、鹿島建設が入社3~5年目の社員に実施している「アイカンパニー研修」の内容と成果を紹介する。

企業実例_ペースメイク期
鹿島建設株式会社:引力に引っ張られず、自分のキャリアを切り開く研修

Z世代の社員マネジメント』(日本経済新聞出版)

 鹿島建設株式会社は、総合建設業を営む企業である。創業は1840年と長い歴史を持っており、現在は建物を造る建築事業、土木構造物を造る土木事業のほか、不動産開発や設計・エンジニアリングなど、世界中で事業を展開している。

 同社は、企画から設計、施工、建物竣工後の管理に至るまで、すべてのフェーズの専門家が連携するグループの総合力を強みとして今日まで成長を遂げてきた。また、デジタル化が遅れていると言われる建設業界において、2020年にデジタルトランスフォーメーション(DX銘柄)に選定されるなど、DX化を強力に推し進めている企業としても知られている。

 同社は、中期経営計画において「多様な人材が個性を発揮し、主体性をもって挑戦し続ける組織にしていこう」という方針を掲げている。この方針を実現するため、「全部門共通で、13年かけて新入社員を一人前の鹿島社員にしていこう」という育成計画をスタートしている。

 多岐にわたる知識・技術の習得が求められる業界といえども、13年という長期スパンで新入社員の育成計画を立てている企業は多くはない。知識だけでなく経験も含め、ジョブローテーションを行いながら13年の育成計画を実践しているのは、同社の大きな特徴だといえるだろう。