CLTを用いたパビリオン「CLT PARK HARUMI」。建築家の隈研吾氏がデザインを監修し、2020年秋まで東京都の晴海で公開された後に解体され、2021年春に岡山県真庭市へ移築された。 写真提供:山陽新聞/共同通信イメージズ

 建物を造るには多大なエネルギーや資材を必要とするため、環境に少なからぬ負荷がかかる。その負荷を減らすと同時に、建設業を持続可能な産業とするために、建設業界はどのような取り組みを推進しているのか。

 再生可能エネルギー事業への参入、木造・木質建築など、ゼネコン各社が注力するビジネスについて、日刊建設工業新聞社取締役待遇編集局長の遠藤奨吾氏に聞いた。

<連載ラインアップ>
■第1回 「新4K」が人材不足解消の鍵に、日刊建設工業新聞社編集局長に聞く建設業界の今
■第2回 「i-Construction2.0」で3割の省人化は可能か? 日刊建設工業新聞社編集局長に聞く建設業界のDX
■第3回 脱炭素化や省エネ対応など、実は先進的だった建設業界、日刊建設工業新聞社編集局長に聞く建設会社の環境対応(本稿)


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サステナビリティーの意識は浸透

――建設業界は環境対応にどのような姿勢を取っていますか。

【日刊建設工業新聞】

1928年(昭和3年)から刊行され、読者数約34万人、その7割を建設産業関連の経営者・役員が占める。国内外の最新業界情報に加え、建設業界のキーマン、現場で活躍する人々のインタビューも掲載。毎年東京と近畿で「建設技術展」を主宰するなど、紙面に止まらない情報発信も行う。

遠藤奨吾氏(以下敬称略) 建設業は人工物を造ることが本業ですから、自然環境に負荷をかけるというイメージがあるかもしれません。山を掘ってトンネルを造るとか、川をせき止めてダムを造るなど、環境を悪化させているというネガティブな印象を持っている人もいるかと思います。

 しかし、そういうイメージを持たれがちだからこそ、建設業は早くから環境への対応に率先して取り組んできた産業と言えます。例えばコンクリートや鉄骨など資材のリサイクルやリユースなどには、昔から広範に取り組んできており、かなりの実績があります。こうしたリサイクルなどは特別ではなく当たり前の取り組みであり、今できることはほぼ実行しているでしょう。

 資材のリサイクルには、セメントメーカーや鉄鋼メーカーなどサプライチェーンに関わる他業界の協力が欠かせませんが、サステナビリティーの流れは定着していると言えます。最近はカーボンニュートラル対応の一環で、二酸化炭素(CO2)を固定したり、吸着させたりしてCO2排出量を実質ゼロ以下に抑えるカーボンネガティブコンクリートなどの技術開発や実用化の動きも活発です。

 ただ、建設業は受注産業ですから、自分たちの意思だけで決められないところもあります。建設会社が環境負荷の低減や保全対策などを提案しても、それを実施するかどうかは施主や発注者側が最終的に決めることになるからです。

 建設会社としてはその意向に従わなくてはなりませんし、どれだけ環境に良い取り組みでも発注者側の予算との兼ね合いがあります。また現場で使う建設機械とかコンクリートなどの資材も、基本的にはそれぞれのメーカーが作っているもので、建設会社が省エネ型の製品を独自で開発するのは難しいです。つまりはメーカーサイドの技術革新が、建設業の環境対応に大きな影響を与え、メーカーとのコラボレーションが重要なキーワードになります。

 メーカーの作ったさまざまな環境配慮型の製品を実際に現場で使った上で、より環境負荷を低くするための提案をメーカーにするとか、開発の過程でメーカーと協業するということもあるでしょう。

 メーカーの作ったさまざまな製品を現場ごと最適に組み合わせ、より省エネ性能を最大限に高め、環境負荷を最低限に抑えるように使い方をいかに工夫するかが建設業の取り組みの肝になりますし、そういうことが環境対応でのノウハウにもなっていくわけです。

 コストと手間をいくらでもかけられるのであれば、カーボンニュートラルの実現性は一段と高まります。しかし、建機でも資材でも、環境配慮型の製品は価格が高くなる傾向にありますから、発注者側の理解がないと安易に使うことはできません。そういう意味で建設業の環境対応は、発注者や施主、さらに言えば社会全体の理解が重要であり、一産業だけの問題としては語れない部分があります。