
日本のGDP(国内総生産)の実に22%を占める、建設・不動産・住宅の3業界。日本経済を支えるこれら巨大産業が、今「変革のタイミング」を迎えている。本連載では『「建設業界」×「不動産業界」×「住宅業界」Innovate for Redesign』(篠原健太著/プレジデント社)から、内容の一部を抜粋・再編集。異業種に比べてDXやGXの面で後れを取る3つの業界に求められている、産業構造の「リデザイン」について考える。
今回は、現場の省人化をはじめ建設業界の環境を大きく変革する「RX(ロボティクス・トランスフォーメーション)」をテーマに取り上げる。
建設業は製造業と比べて「真のDX」が進みにくい

では、真のDXとは、どんなことでしょうか? これは、過去データをベースに、より精度の高い意思決定ができるようにすることだといえます。
製造業の場合は、ボラティリティが少ない(使用する部品が固定、部品ごとの加工方法やコストなどもほぼ固定)ため、過去データの活用がしやすいという特徴があります。
一方、建設業は、どちらかというと1案件ごとに個別に適した対応が必要になってくるので、過去データの活用が難しいという状況になっています。また前述したように、施工工事の主体は職人である一方、モノの製造は工作機械が行います。そのため、どのようなモノがどのくらいの時間でできるかというのが、建設業よりも予測しやすいのです。
しかしながら建設業界において、個別性が高いからという理由でDXの道を諦めてもよいのかというとそうではありません。むしろ過去案件で溜まったデータをより多く集めて、モジュール化したナレッジを蓄積していく必要があるのです。
建設業での課題は、毎回、原価計算、発注先の選定、見積額の決定をゼロからやっていて、過去のデータがまったく反映されていないこと、もしくは、過去の経験を参考にしているものの、それが属人化してしまっていて、そのナレッジが会社に残っていかないこと、さらに、正確とはいえない意思決定が行われ続けていることになります。