写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 2025年11月、竹中工務店はドイツのソフトウエア企業ネメチェクグループと、建設DXに関する包括連携を発表した。「建設デジタルプラットフォーム」構想の下、同社は業界全体のデジタル変革を目指す。“部分最適”にとどまりがちな建設業でDXを推進するために同社が取り入れたのが、“ドラえもん”と“のび太”に学ぶ、人とAIの新しい関係性だ。

 東京大学 松尾・岩澤研究室の人気講座を凝縮した『AI経営講座 スーパーエッセンシャル版』(東京大学 松尾・岩澤研究室/PwC Japanグループ著/集英社インターナショナル)から一部を抜粋・再編集。竹中工務店 村上陸太氏の講義「竹中工務店(建設業)におけるAIの導入と展開」より、AIと人間の役割分担、そして共創の在り方を探る。

AIとロボティクスの共進化
――竹中工務店のケース

AI経営講座 スーパーエッセンシャル版』(集英社インターナショナル)

 建設現場を思い起こせば容易に想像がつくだろうが、実際の建設現場で精密機械のロボットを稼働させるのは、場所としての条件が過酷すぎる。

 また、ロボティクスやAIなどデジタル技術を実際に使うのは現場の職人さんだ。作業を監督する立場のゼネコンの社員はほとんど使わない。にもかかわらず、職人さんが使う技術をゼネコンが開発するという「ねじれ現象」が起こっている。

 しかも、現場を転々とする職人さんは、同じゼネコンとばかり仕事をしているわけではない。そのため、ゼネコンがそれぞれの立場で開発しても、職人さんが操作を覚えるのは難しい。

 極端なケースで言えば、同じ機能のロボットでも、あるゼネコンのロボットはレバーを前に倒せば前に進むのに、他のゼネコンのロボットはレバーを後ろに引かないと前に進まないという事態が起こっている。

 デジタル技術の開発・導入は非常に高価なため、1社単体ではコスト的に合わない。この課題も、各社に導入を躊躇させる要因になっていた。

 建設業界はこうした理由を挙げ、いつも言い訳をしてきた。

「われわれ建設業は、他の業界とは違うから」

 その姿勢が、デジタル技術を導入できない現状に自らを陥れている。

 同時に、ロボット開発、AI開発に対する建設業の先入観や思い込みもあった。