出所:共同通信イメージズ出所:共同通信イメージズ

 欧米、日本で「EV減速論」が語られる一方、中国の自動車産業はすでに次の競争軸へと踏み出している──。中国EVの新たな動向について、「生成AIの登場が車づくりの前提を大きく変えた」と分析するのは、ナカニシ自動車産業リサーチ代表アナリストの中西孝樹氏だ。2025年10月に著書『トヨタ対中国EV 熾烈な競争が最強メーカーを生む』(日経BP 日本経済新聞出版)を出版した同氏に、日本企業が直視すべき中国EVの最新動向と、日産・ホンダを抜き去った比亜迪(BYD)、したたかな買収戦略で存在感を高める吉利汽車(ジーリー)の強さについて聞いた。

「知能化」という新たな競争軸

──著書『トヨタ対中国EV』では、知能化戦略を進める中国EVの動向、そして国内自動車メーカーの戦略について解説しています。今回、どのような理由からこうしたテーマを選んだのでしょうか。

中西孝樹氏(以下敬称略) 「トヨタ」という個社名を冠した本は今回で3作目です。最初の『トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業』では、リーマンショック後にトヨタが「標準化」によって競争力を取り戻した過程を分析しました。

 そこから10年を経て書いた2作目『トヨタのEV戦争』では、急速に進んだ「電動化」の波が日本企業に与えたインパクトを追いました。そして本書では、その先に訪れた「知能化」をテーマにしています。

 2作目からわずか2年半の間に、AIの登場によって自動車産業の競争構造は大きく変わりました。 標準化、電動化、知能化という順で、全く新しいゲームルールでの戦いへと移り変わっているのです。

 今まさに知能化で先頭を走っているのが、BYDをはじめとする中国自動車メーカーです。今回あえて個社名をタイトルに入れなかったのは、中国が国家戦略としてAI、半導体、デジタル産業を連携させ、自動車の自動化を一気に進化させようとしている背景があるからです。

 この厳しい競争環境の中で、トヨタを含む日本勢は「どこを変え、どう勝ち筋を描くか」を再定義する必要があります。それが本書のテーマです。