写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

 2025年10月に発足20周年を迎えた、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)。金融業界で先駆けてAI専門チーム「デジタル戦略統括部」を立ち上げ、社内導入を進めてきた。ビジネスを止めることなく、急速に変化するAIを取り入れるには、どのような枠組みが必要なのか。

 東京大学 松尾・岩澤研究室の人気講座を凝縮した『AI経営講座 スーパーエッセンシャル版』(東京大学 松尾・岩澤研究室/PwC Japanグループ著/集英社インターナショナル)から一部を抜粋・再編集。三菱UFJ銀行 西原靖幸氏の講義「AIガバナンスの重要性と実践」より、AIを経営に組み込むためのヒントを探る。

AIとガバナンス
――三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のケース

AI経営講座 スーパーエッセンシャル版』(集英社インターナショナル)

 MUFGのAI管理態勢は「3線モデル」を採用している。(図表3-1参照)

 実装・導入を推進する組織が1線、管理・牽制する組織が2線、1線と2線が健全に機能しているかを独立的にチェックする組織が3線と位置づけられるが、実装・導入を推進しつつも管理・牽制を担う「1・5線」ともいえる組織も設けている。

 それに該当するのが、デジタル戦略統括部である。この部署は、DX、AIの実装を積極的に推進する「推進サイド(1線)」の側面と、実装に伴うリスクを管理する「管理サイド(2線)」の側面を兼ね備えている。

 導入・運用を含むAI管理はCDTO(チーフ・デジタルトランスフォーメーション・オフィサー)が全体を統括し、AIのリスク管理はデジタル戦略統括部(1・5線)とリスク統括部(2線)が関連のリスク所管部署(サイバー・法務・コンプライアンスなど)とも連携しながら、共同管理する。

 2線は1・5線を牽制かつ支援する。そして、監査部が3線としてその活動を独立的に監査する。このような万全の態勢を構築した。