写真提供:日刊工業新聞/共同通信イメージズ

「脱炭素化」「安定供給」といった難題への対応を迫られる日本のエネルギー業界で、生成AIの活用が本格化している。「AX(AIトランスフォーメーション)」は業界にどのような未来をもたらすのか。『エネルギー業界を変革するAX戦略』(大植択真、山岡義史、出馬弘昭著/電気書院)から一部を抜粋。抜本的な生産性向上や新たな価値創造を実現するためのヒントを探る。

 出光興産は、熟練者の自負が詰まったタンカー配船計画をいかにしてAI前提へとつくり替えたのか。

出光興産
事業部との共創を通じた業務プロセス変革の哲学とチャレンジ

■ 改革の哲学と戦略設計――過去の成功体験という壁をどう崩すか?

前田 一樹(まえだ・かずき)氏
1990年、出光興産に入社。情報システム部門、販売部門、需給部門などを経験。2016年に出光電子材料韓国代表取締役社長、2018年に出光クレジット執行役員営業本部長、2021年に出光興産の流通業務部長、2024年にデジタル・ICT(情報通信技術)推進部長、2025年より執行役員、デジタル・ICT推進部長、現職。

 出光興産のDX戦略は、DX推進の土台である「データを利活用しやすいデータ基盤の整備」と「デジタル技術を活用できる人財育成」を推進しながら、「ステップ1:日常業務の効率化」、「ステップ2:業務プロセス変革」、「ステップ3:新たな価値創出」という3つのステップで構成されています(次ページ図表3-17)。

「特にステップの順序にはこだわっておらず、事業部門が多岐にわたり、それぞれ特徴もあるので、どこから入ってもよいとは思っています。そうはいっても、組織全体のDXリテラシーやデータ基盤がないとDXが進まないと思うので、そういった基礎力という意味でステップ0は必要だと思っています」

 基礎力獲得(ステップ0)のあと、生産性の向上として、ステップ1からステップ2に進みます。

「まず、ステップ1(日常業務の効率化)として、DXが実感できる小さい成功体験を持つことが必要だと思っています。これによりステップ2(業務プロセス変革)のヒントが生まれ、次に進みやすくなります」